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2007年3月30日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(6)

昨日、東京は突然に暖かい日になりました。春を通り越して初夏の勢いでして、桜も一気に開花。満開になりました。はやいもので、もう4月なんですね。試験も近くなってまいりました。また、そろそろ1次の話を蒸し返しておこうかな、と思いつつ、しかし論文作成法の2回目もまだやってません。やらねば。

▽ さて、前回は商標権の効力についての導入ということで、専用権範囲、禁止権範囲、並びに防護標章制度で抑えられる範囲という点について説明いたしました。

■前回のまとめ
 前回の内容を、もうすこし図式的にまとめますと、馴染のある絵になるかと思います。普通は、円か何かで同一範囲、類似範囲を表すのですが、ここでは少々工夫して、マーク軸と指定商品・役務軸とをつくって二次元的な広がりで表現してみましょう。

07033001

 使用権を占有できる「使用権範囲」は、指定商品・指定役務と同一性のある範囲で、マークと同一性のあるものの範囲です。
 それに対して、
 (a)指定商品・指定役務に同一性があってもマークが類似している場合
 (b)指定商品・指定役務が類似していて、マークに同一性がある場合
 (c)指定商品・指定役務も、マークも類似の範囲にある場合
の(a)から(c)の各場合にあたるのが、禁止権範囲という部分です。ここは商標権者の積極的な使用が求められる部分ではなく、単に他人の使用を排他する部分ということになります。

 そして前回ちょっとご紹介した防護標章制度のカバーする範囲は、マークが同一で、指定商品・役務が非類似の範囲にある場合です。この他にも要件があることは前回ご説明しました。著名性や混同発生のおそれなどが必要なんですよね。なお、この「マークが同一」という点について、完全同一を求める判決がある一方で、同一性の範囲を緩めに解釈した判決などもあり、制度の目的に即して範囲を決するしかなさそうです。この意味で、図ではちょっと類似範囲のほうへ引っ張った絵にしてますが、基本は同一の範囲のみと思っておいてください。

 なお、マークも、指定商品・役務も非類似という範囲(A)には権利が及びませんし、マークが非類似だと(B)、防護標章のような制度はありません。まぁ、当然といえば当然ですが。

■侵害の予備的行為への効力の拡張
 前回は、商標法37条のうち、1号だけを掲げましたが、これは、1号と、2号以下とに相違があるからです。どのような相違があるか、お分かりでしょうか。青本には記載がありますよね。ちょっと青本を引用してみましょう。

 本号(1号)は、二号以下が本来的な侵害の予備行為的な色彩をもつのに対し商標権の本来的侵害と考えられる点で多少ニュアンスに差がある。したがって、二号以下はなんらかの意味で侵害と関係づけられる目的を構成要件とし、この目的がない限り可罰的行為とはならないのに反し、本号は目的を必要としない。

 では、37条全体を見てみましょう。

□37条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
1.指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
2.指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
3.指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
4.指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
5.指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
6.指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
7.指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
8.登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

2号以下を見ていきますと、「譲渡、引渡し又は輸出のために」、「これを用いて当該役務を提供するために」…など、「XXノタメニ…」という目的の限定があります。1号にはこれはありません。この条文は4条1項とならんで、商標法で覚え難い規定の一つだと思いますが、

丸暗記が原則

です。

 なお、暗記術として、ですが、こういう長そうな条文は、規定に現れる単語を記号に置き換えるのも一つの手です。例えば指定商品をP(Productの意味で)、指定役務をS(Serviceの意味で)とし、同一を「同」、類似を「類」としておきます。覚えやすい記号をそれぞれで工夫して下さい。

すると、

2号 : P同、PS同類のP、Por包装にマーク同類を付して、譲引出のため所持
3号 : S同、PS同類のS、提供受ける者の利用するものにマーク同類を付して役提目的所持、輸入
4号 …

として整理します。
 また、別の方法として、実際にこれらの行為をしているつもりになってみるのも手です。例えば、「ドトールコーヒー」を例として、

2号 : ドトールのコーヒー豆とか、それに似たものとか、包装用紙にドトールとかそれに似てる商標をつけて、譲渡、引き渡し、輸出するために所持してる、

とか想像していくわけです。
 また、「XXするため」とあるものと、「XXさせるため」というものとがあり、こういうのを対比すれば、規定を整理していくことができるでしょう。

 私、個人としては、いろいろやっているうちに何だか覚えちゃった、という状態になり、記号法でも、行為を想像する方法でもなく、思い浮かぶまでになりました。きっと、そんなものです。

■つぎに、消極的効力に絡めて、商品・役務の同一類似の判断や、マークの同一類似の判断に行きたいのですが、なんだか長くなってしまいましたので、今回はここまでに致します。

・今回の参考文献:

小野昌延「商標法概説」:

青本(工業所有権法逐条解説):

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