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2007年3月23日 (金)

[弁理士試験]商標法案内(5)

やや春めいてきたかと思えば、寒かったりと、まさに三寒四温の気候です。新宿御苑の東端側に東京都水道局に関係する建物が建っていますが、その片隅に一本の桜が植わっております。今日見てみましたら、この桜、咲き始めておりました。春になりますと、試験シーズンが再開でもあります。

▽ 前回は3条を取りあげました。順番からすると4条なのですが、この条文は暗記がキモですので、ちょっと置いておいて…。

■商標権効力の限界
 商標の登録については、使用を要求する国というのがありますが、我が国の商標法では、将来的な使用によって未必的に化体する信用をも保護する利益があるとして、登録の要件としては、使用を求めておりません。…少々難しく言いましたが、要するに、いまはまだ使っていないけれど、将来使おうと思っているんだ、という商標も出願して登録させることができるわけです。※コメントを参照

 もっとも、登録後に使っておりませんと、不使用取消審判などという審判を掛けられるおそれも、なきにしもあらず。

 一方、商標権の効力の側面を見てみますと、商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標を専用する権利を有することになります(25条)。

□第25条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

 また、商標というのは、「あれ?良く見たら似た名前のニセモノじゃん」というのでは困るので、類似範囲での他者使用をも禁じています。

□第37条(1号) 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
1.指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用

 読み難い条文みたいですが、
 商品役務同一で、マークが似てる 又は
 商品役務が似てて、マークが同一か、若しくは似てる

 というわけで、それほど難しくはありません。

 なんじゃ。それなら、商品役務かマークの少なくとも一方が似てるか同一、と言えば。と思われるかも知れませんが、これは間違いです。商品役務とマークとが同一の場合は25条に書いてあるわけで、ここでは両者同一の関係を除いているんです。

 さて、こうして商標権の効力というのは、
(1)指定商品役務もマークも同一 … 商標権者専用(専用使用権範囲除く)
(2)指定商品役務同一×マーク類似、or 指定商品役務類似×(マーク類似+マーク同一) … 他者使用禁止
という効力であることがわかります。(1)がいわゆる「専用権範囲」、(2)がいわゆる「禁止権範囲」です。この名称は条文には書いてありませんから、論文で使う場合は語釈を並記するほうが無難かもしれません。

 ですが、商標権に対する脅威には、いま一つの態様があるのです。

■商標権効力の拡張
 有名な例が「ソニー・チョコレート」です。
 あの電器メーカーのソニーは、会社のスタートポイントこそトランジスタ・ラジオでしたが、技術者重視の社風で、他社とうまく差別化したクールな商品が売りになっています。そのために、ソニー製品マニアともいうべき人たちが多く存在します。
 一方で、例えばソニープラザに代表されるような、電器とは関わりのない小売りにまでグループを展開しており(ちなみに昨年、ソニープラザはソニーグループからは抜けたようです)、そんな企業ですし、世界的に著名なので、

「あっ、ソニーチョコレート? チョコレートくらい作りそうだよな」

てな具合で、ソニー製のチョコレートと誤認した需要者が買っていってしまうことも考えられます。
 もちろん、そのチョコレートはソニーとは何ら関係がないのです。
 これでは、困る。ソニーという大層著名な商標に乗っかって、まったくソニーと無関係な会社がチョコレートを販売しているわけです。商標法的には大問題です。
 そこで、商標が著名な場合は、実際には使わない、そして登録された商標の指定商品・指定役務に類似していない商品・役務のものについて、権利の禁止的効力を拡大してやろう、という考えが生まれました。その結果が「防護標章制度」です。

 この防護標章制度、64条以下に条文が並びます。登録要件(64条)からして(試験に出しやすいという意味で)重要なのですが、なんといっても、この条文の長さから、学習を諦めてしまう受験生が少なくないようです。私自身、勉強を初めたてのころ、某予備校の講師から「防護標章法という別法があるつもりで、法律を一冊まとめてみよ」と言われて、書き出してみたのですが、あまり頭に残りませんでした。
 代りに私が採用したのは、準用されている側の条文に「防」記号を付ける方法です。読み替えは注釈程度に余白に書き込んでいきます。こういうとき、余白の多い四法対照が活きてきます。
 この方法ですと、別の冊子をつくる必要もなく、また一応準用条文を追いかける結果になりますので、割合頭に入りやすいかと思います。「防護標章法」をつくる方法では、もとの商標法に対して相違点を付け焼き刃で変更するスタイルになるので、あまり頭に残らなかったのです。

 まぁ、こうした記憶法については個人差がありましょうから、みなさま各人がそれぞれに適した方法を見出されることを願っておりますが。さて、それでは、一問だけ問題をば。マルかバツか。

□何人も、登録防護標章(防護標章登録を受けている標章をいう。以下同じ。)と同一の商標であつて、その防護標章登録に係る指定商品又は指定役務について使用をする商標について、商標登録を受けることはできない。

解答は×になります。4条1項12号をよっくご覧下さい。先頭に「他人の」とついています。本人の、であれば登録可能性がないとはいえません。

次回は、この防護標章あたりを足がかりにして、商標権の効力あたりをもう少しつついてみたいと思います。

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コメント

商標法案内(5)の記載のなかで、登録に際して使用を要件としないことと関係して、未使用の商標を出願するとき、使用予定表は不要と書きました。

ただ、実務としては使用予定表を求められる場合もあり、今後それも拡充されるので、誤解を招くのではないかとの指摘を、記事をみた同僚から受けましたので、該当部分を削除しました。

投稿: ntakei | 2007年3月24日 (土) 06時51分

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受信: 2007年3月29日 (木) 23時30分

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