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2007年2月 5日 (月)

書き方のはなし

久々に、深夜までNHKのTVを点けっぱなしにしておいたら、減力放送だとかになるという。減力放送って何だ、と思っていると、やがて「ザッ」という音の後、映像にゴーストが入るようになった。減力放送の威力?であろうか。放送電波が弱ってゴーストキャンセル用の基準信号GCR(Ghost Cancel Reference)が使えなくなったのだろうか。この現象は初めて見た。

▽ 初めてといえば、先月は、年始を機に新しいことを始める人が多かったのか、「明細書」や「書き方」といったキーワードで、この blog を検索してくださる方が多かった。

■明細書の書き方
 ひとことに「明細書の書き方」といっても、分野によっても書き方が違うし、山のようにあるノウハウ本も、どれも一長一短で決め手を欠くように思う。まぁ、本一冊読んで明細書が書けるようになるなら、苦労はないわけであるが、そこまで人生は甘くない。

 明細書は、権利範囲を特定する「特許請求の範囲」という書面と、技術事項を説明するための「明細書」という書面、それに「図面」、そして最後に「要約書」が必要になる。これらをまとめ、「特許願」という願書とともに出願、ということになる。

 このうち、書き方が難しいのは特許請求の範囲と明細書とである。

■超簡易版・特許請求の範囲の書き方
 これはもう、blog 記事で書けといわれても無理がありすぎる。形式的な側面だけいえば、発明に必要な事項だけを書き並べる形式が一番書きやすい。
 まず、【請求項1】と書く。そして、発明に必要な事項を並べる。並べるといっても書流す方法と、箇条書き風にする方法とがある。

 回路ものなどは箇条書きにするのが書きやすい。箇条書き、というのは、

 【請求項1】 
 映像信号を含む放送信号を作成し、当該放送信号の垂直帰線区間にパルス状信号を挿入して放送する放送側設備と、
 前記放送側設備から放送信号を受信する受信側装置と、を含むテレビジョンシステムであって、
 前記受信側装置は、受信した放送信号に、垂直帰線期間に前記パルス状信号が複数受信されている場合に、当該複数受信された前記パルス状信号の各々の受信レベル及び受信タイミングを検出する検出回路と、
 当該検出した複数の前記パルス状信号の各々に対応する受信レベル及び受信タイミングに基づいて、映像信号に係るキャンセル信号を生成し、映像信号に合成する合成回路[※1]と、を有することを特徴とするテレビジョンシステム。

 という風である。

[※1]この部分の記載はもう少し詳しくした方がいいです(と、いうか、このままだと記載不備の可能性が高いです)が、ここでは省略して、ここまでにしておきます。

 書流し風は、機械っぽいもので、土台があって、支柱があって…のように構造を説明するパターンで使いやすい気がします。

 なお、この例のように送信側、受信側を含む発明の場合は、状況に応じて、送信側装置単体、受信側装置単体での請求項を含める。実施場所が一ヶ所であるほうが権利の行使がやりやすい場合が多いからだし、だいたい放送設備とそれに対応する受像機とを一緒に製造するメーカーも少なかろう。
 でも、放送信号が特殊なわけだし受像機だけの請求項は書きにくいような気がする、という人もいるだろう。そんなときは、こうすればいい。

 【請求項2】 
 垂直帰線区間にパルス状信号が挿入された放送信号を受信する受信側装置であって、
 受信した放送信号に、垂直帰線期間に前記パルス状信号が複数受信されている場合に、当該複数受信された前記パルス状信号の各々の受信レベル及び受信タイミングを検出する検出回路と、
 当該検出した複数の前記パルス状信号の各々に対応する受信レベル及び受信タイミングに基づいて、映像信号に係るキャンセル信号を生成し、映像信号に合成する合成回路と、を有することを特徴とする受信側装置。

 端的に言えば、発明が分かればそれでよいのだ。

■超簡易版・明細書
 誤解を恐れずに端的に言えば、明細書もまた、

発明がわかるように書く

ということに尽きる。
 どんな説明の仕方をしようが基本的には自由である。もっとも長年の経験から、分野、従来技術、その課題、解決手段、作用効果、実施の形態という順序で書くことになっている。特許庁のウェブページで入手できる明細書のひな型(例えばhttp://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/pdf/h15_7_newpaper.pdf)の通りである。
 分野の記載は、一般には、

本発明は、XXに係り、特にYYに関する。

というような書き方をする。XXは発明の対象になる製品などを記載し、YYには工夫点を書く。例えば、

本発明は、テレビ放送信号を送受信するテレビジョンシステムに係り、特にゴーストの低減に関する。

というように書く。もっとも、あまり詳しく書くことを嫌い、

本発明は、テレビ放送を送受信するテレビジョンシステムに関する。

のように簡便に記載する例もある。
 続く従来例から課題、手段、作用効果が、実際には明細書のハイライトとも言える部分である。
 明細書の基本は「お話づくり」であり、

・いままでこうだった(従来)。
・こんな問題があった(課題)。
・そこでこうした(手段)。
・その結果こうなった(作用・効果)。
・実際に作るなら、こうすればいい(実施形態)。

というような説明をしていくことにある。多くの個人出願人が従来例について、「ない」などと勇ましいことをいうが、それは「従来」を不当に拡大解釈しているか、自己の発明を過大評価しているだけのことである。ここでは関連技術を記載すればそれでいい。なお、特許庁の電子図書館で、似たような技術で、既に出願されているものが見つけられたなら、その内容を開示する。
 化学分野の発明でもなければ、従来技術からの課題認識なく、突然何かができた、というのは不自然というものだ。

■ミニ明細書
 慣れないうちは、書き始める前に、下書きとしてミニ明細書を書いておくとよい。
例えばこんなふうだ。

・従来:ゴーストが発生することがあった。
・課題:ゴーストが発生した映像をクリアにすることが困難であった[※2]。
・手段:送信時にゴースト除去用の信号を入れる。受信側ではこの信号の反射・回折の影響を調べる。そして調べた結果に基づいて映像信号から反射・回折の影響を打ち消す。

[※2]ここでは仮に、現代のゴースト除去技術がなかった時代の話をしています。

そして、このミニ明細書を見ながら、本当の明細書を展開していく。

・従来=アンテナに到来するテレビ放送信号は、伝播の過程での反射・回折などの影響を受けている。現在一般的なテレビジョン装置は、この到来したテレビ放送信号をそのまま映像信号に復調している[※3]。

[※3]くどいようですが、ここでは仮に、現代のゴースト除去技術がなかった時代の話をしています。

・課題=そのために現在一般的なテレビジョン装置では、直接波による映像と、反射波による映像とが合成して再生され、映像が二重に映されるゴースト現象が生じることがあって画質が劣化する。そこでゴーストを除去する技術が求められている。なお、映像信号をクリアにするための技術としては、例えばノイズ除去装置などが従来から知られている(特許文献1:特開平X−XXXX号公報)。

・手段
 放送設備側において、放送信号の垂直帰線区間にパルス状信号を挿入する。
 受信テレビジョン装置において、前記パルス状信号が複数受信されている場合に、当該複数受信された前記パルス状信号の各々の受信レベル及び受信タイミングを検出、
 当該検出した複数の前記パルス状信号の各々に対応する受信レベル及び受信タイミングに基づいて、キャンセル信号を生成し、受信した放送信号に合成する。

・作用効果
 放送信号に含めたパルス状信号を利用して、実際の伝播の状況に対応したキャンセル信号を生成している。これによって伝播の状況によって生じるゴーストが低減される。

のように書いていくわけである。作用効果は、課題の裏返しになる。ゴースト除去技術が求められている→ゴースト除去が達成できる、という関係に立つ。時折、すれ違っている課題−効果を見受けるが、そうなると発明が何を解決しようとしているのかが不明瞭になる。

 なお、手段の欄というのは、実際には請求項に書くべき内容に近い。実際に、請求の範囲をそのままコピーして手段の欄とする例もある。ムダであると思う向きもあるようだが、それはそれで理由がある場合もある。

・実施の形態では、請求項に書かれた発明を実装する例をかいていけばいい。ここまでの例では、テレビシステムを請求項に書いたから、放送側設備の構成ブロックと、テレビ受像機の基本的な回路構成ブロックとを説明していけばいい。
 発明に関わりのない回路部分は説明を簡略にする。そのためには回路ブロックを大きめにとる。例えば、リモコン信号受信部、チャネル選択部、チューナ部…と書くよりも、一個のチューナ部としてしまい、「視聴者の指定するチャネルを選択的に受信する」回路だと説明してしまえばよい。これの後段にゴーストキャンセル回路部を配置して説明をすればいい。このブロックは細分化して、パルス信号検出部、ゴースト強度・位置検出部、キャンセル信号発生部、合成部、のように分けておくと丁寧だ。発明に関する部分の説明は厚くしておくのだ。

 この明細書は補正の根拠としても使えるから、なるべく丁寧に書いておくといいのだが、発明に関わりのない事項まで丁寧に書いても、あまり使えないことが多い。このあたりは何件か処理をやってみないと分かりにくいかも知れない。

■以上、駆足で明細書の書き方を書いてきた。これだけ見れば大丈夫、などとは思わないで欲しいが、こと明細書一般については、最初にも書いたように、特にお勧めの書籍もない(明細書に関わる個別的な事柄ならあるけど)。
 自分で明細書を書きたいならば、何よりも既に出願されているものを参考にしていくに限る。特に、お気に入りの代理人を見つけるのである。その人の書き方を集中して学べばよりよい。代理人によっても書き方のスタイルが違うので、スタイルの相違と、本質的な明細書の書き方の問題とをちゃんと峻別して勉強できた方がいいわけである。そしてできるならば、明細書などは代理人に最初から任せた方[※4]が、権利化にも有利だと思うのだが、まぁ、代理人に頼むのはちょっと出費がかさんでしまうしなぁ…。

[※4]弁理士は、ふつう、請求項についても明細書についても、もっともっとずーっといろいろなことを考えます。ほんとうです。

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