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2007年2月 2日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(22)

本日は、東京から特急で1時間半ほどの距離にある出張先へ行ってきました。車両のせいか線路のせいか、ガタガタと微妙な揺れが嫌な電車で、作業をしようとしたのですが、なんだか酔ってしまい、半分は睡眠に徹しました。いまだになんだか具合が悪いです。

▽ さて前回は、国際段階の補正をどのように国内につなげるかという規定について見ました。ここから先は国内出願に対する諸規定との整合を図ることになります。

■国内公表
 国内出願であれば、出願から1年6月経過時に出願公開が行われます。この出願公開、審査の段階がどのようであっても強制的に公開がされるという制度です。
 特許協力条約(PCT)では、国際段階においてこの国内の出願公開に似た、国際公開が行われます。

□PCT第21条(1)、(2)
(1) 国際事務局は,国際出願の国際公開を行う。
(2) (a) 国際出願の国際公開は,(b)及び第64条(3)[留保]に定める場合を除くほか,国際出願の優先日から18箇月を経過した後速やかに行う。

しかも、その効果は、

□PCT第29条(1)
(1) 指定国における出願人の権利の保護に関する限り,国際出願の国際公開の指定国における効果は,(2)から(4)までの規定に従うことを条件として,審査を経ていない国内出願の強制的な国内公開について当該指定国の国内法令が定める効果と同一とする。

 「審査を経ていない国内出願の強制的な国内公開」というのは、まさに我が国であれば出願公開のことをいいます。したがって、国際公開がされた以上は、国内移行後に我が国で重ねて出願公開をするだけの意味はないことになります。しかしPCTでは、日本語で出願されているとは限りませんので、その手当てが必要になってきます。PCTにもその事情は盛り込まれておりまして、

□PCT第29条(2)
(2) 指定国の国内法令は,当該指定国において国内法令に基づく公開に用いられる言語と異なる言語で国際公開が行われた場合に(1)に定める効果が次のいずれかの時からのみ生ずることを定めることができる。
(i) 当該公開に用いられる言語による翻訳文が,国内法令の定めるところにより公表された時
(ii) 当該公開に用いられる言語による翻訳文が,国内法令の定めるところにより公衆の閲覧に供されることによつて公衆が利用することができるようにされた時
(iii) 当該公開に用いられる言語による翻訳文が,国際出願に係る発明を許諾を得ないで現に実施しており又は実施すると予想される者に対し出願人によつて送付された時
(iv) (i)及び(iii)に規定する措置の双方がとられた時又は(ii)及び(iii)に規定する措置の双方がとられた時

 さて、これに対応するための我が国の規定は、ちょっとばかりテクニカルです。まず、PCT出願が、日本語であろうが外国語であろうが、「出願公開はしない」と言いきってしまいます。

□184条の9第4項
4 第64条の規定は、国際特許出願には、適用しない。

こうすると、出願公開があったときに発生する補償金請求権などの効果が失われます(65条を参照)。
 ところで、外国語でされたPCT出願については、国内移行時に提出された翻訳文を用いて、「国内公表」というのをします。

□184条の9第1項
 特許庁長官は、第184条の4第1項の規定により翻訳文が提出された外国語特許出願について、特許掲載公報の発行をしたものを除き、国内書面提出期間(第184条の4第1項ただし書の外国語特許出願にあつては、翻訳文提出特例期間。以下この項において同じ。)の経過後(国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求があつた国際特許出願であつて条約第21条に規定する国際公開(以下「国際公開」という。)がされているものについては、出願審査の請求の後)、遅滞なく、国内公表をしなければならない。

掲載事項は同条第2項になりますが、そこで翻訳文の公表が行われることが明らかに書かれています。
 そして日本語でしたPCT出願であれば国際公開、外国語であれば国内公表の効果として、65条同等の効果を与えます

□184条の10
 国際特許出願の出願人は、日本語特許出願については国際公開があつた後に、外国語特許出願については国内公表があつた後に、国際特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、日本語特許出願については国際公開がされた国際特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に、外国語特許出願については国内公表がされた国際特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に、業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
2 第65条第2項から第5項までの規定は、前項の規定により請求権を行使する場合に準用する。

これによって、外国語でされたPCT出願については、PCT29条(1)の規定に従い、(i) 当該公開に用いられる言語による翻訳文が,国内法令の定めるところにより公表された時に国内出願の出願公開と同等の保護を与えることになっているわけです。

■落ち穂拾い
 国内公表については、その時期と、内容についてもう少し整理しておいて下さい。一次試験での出題実績もあります。特に内容については、19条補正があった場合が要注意です。

□184条の9第2項第5号
 第184条の4第1項に規定する明細書及び図面の中の説明の翻訳文に記載した事項、同項に規定する請求の範囲の翻訳文(同条第2項に規定する翻訳文が提出された場合にあつては、当該翻訳文)及び同条第4項に規定する翻訳文に記載した事項、図面(図面の中の説明を除く。)の内容並びに要約の翻訳文に記載した事項(特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるものを除く。)

 まず、最初の括弧書きに「同条第2項に規定する翻訳文が提出された場合にあつては、当該翻訳文」とありますので、19条補正の翻訳文が、当初クレイムの翻訳文に代えて提出されたときは、19条補正の翻訳文が公表にかかります。
 しかし、184条の4第4項にもとづき、当初クレイムの翻訳文を提出した後、さらに19条補正の翻訳文を提出すると、184条の9第2項第5号の「及び」以下が効いてきます。つまり、「及び同条第4項に規定する翻訳文に記載した事項、」ですから、当初クレイムの翻訳文と、19条補正の翻訳文との双方が公表にかかります。

 整理していえば、19条補正があってその翻訳文が提出されている場合、

  • 19条補正の翻訳文だけが公表にかかるケースと、
  • 当初クレイムと19条補正の翻訳文との双方が公表にかかるケースと、

2つのケースがあり得るということです。

 公表の時期については規定通りで単純ですので、皆さまで整理してください。

■もうひとつ−再公表公報のこと
 というわけで、日本語でされたPCT出願についてはPCTでの国際公開を以て、国内での出願公開と同等の保護を与えるワケですが、現実問題として、日本の出願公開とはまったく別の制度で公開されたものをもサーチしなければならないというのでは大層面倒です。
 そこで我が国特許庁では、日本語のPCT出願で、国際公開されたものを、さらに国内で公表することにしています。それが「再公表公報」です。こういう点では、特許庁も多少の親切運動をしているということですね。

 では来週は、補正要件、特許要件の特例等について見ていきましょう。遅々として進みませんね。

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