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2007年1月26日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(21)

まず、前回の正解は、特許法施行規則2条1項です。

□特許法施行規則2条(1項) 書面(次項に規定するものを除く。)は、法令に別段の定めがある場合を除き、日本語で書かなければならない。

▽ 案外どんなことにも根拠となる条文や規則などがあるものです。勉強のとき、ふと疑問に思ったら、いろいろ調べてみることにしておくと、世界が広がることがあります。

■対応関係
 さて、前回までに一応、184条の5までの部分を見ました。とにかく日本国指定のあるPCT出願は、我が国の出願とみなし(184条の3)、定められた期間までに国内移行手続を行うよう、要求しています。これには、基本的に国内書面というのを提出します(184条の5)が、外国語でされたPCT出願についてはさらに、日本語の翻訳文提出を求めます(184条の4)。

□184条の4(第1項本文の概要) 外国語でしたPCT出願の出願人は、優先日から30月(2年6月:国内書面提出期間)以内に、国際出願日における条約第3条(2)に規定する明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。

 184条の4は、多少長いので、切り詰めて概要を示しました。このように見ると、大したことは言っておりません。次に但し書きを見ましょう。

□184条の4(第1項但し書きの概要)
 ただし、国内書面提出期間の満了前2月(=28月)から満了の日(=30月)までの間に国内書面を提出した外国語特許出願(当該書面の提出の日以前に当該翻訳文を提出したものを除く。)にあつては、当該書面の提出の日から2月(翻訳文提出特例期間)以内に、当該翻訳文を提出することができる。

 こちらも大したことありません。国内書面提出から2月以内に翻訳文をだせます、ということで、最大32月までいけるわけです。これは、外国語書面出願との平仄を合わせたものです。

 国際段階で補正をしたときの翻訳文については、ちょっと後に回します。

 次に、こうして国内の出願と同じものとみなされたPCTですが、国内出願で提出するべき書類に該当するのはPCT出願のどれなのか、それを定めておく必要があります。その対応関係を定めるのが、184条の6です。

□184条の6(概要)
 PCTの国際出願日の願書は、国内出願の願書とみなす。
2 PCT出願が→  日本語       外国語
   対応するのは
     ↓
   国内の明細書 PCT明細書  PCT明細書の翻訳文
  国内の請求範囲 PCTクレイム PCTクレイム翻訳文
   国内の図面  PCT図面   PCT図面(図中説明を除く)
 国内の図面中説明   −     PCT図面中説明の翻訳文
   国内の要約書 PCT要約書  PCT要約書の翻訳文

※PCTのものはいずれも国際出願日のもの

3 だたし! 19条補正後のクレイム翻訳文が提出されたときは、補正後クレイムの翻訳文を国内の請求範囲とみなす。

 一応、外国語でした出願の図面中の説明は、国内の図面とはみなされませんので注意して下さい。一次向きの話ですが、この2項の括弧書き「(図面の中の説明を除く)」というのは頻出事項です。また、19条補正の訳しか出してないときは、補正とは扱われず、そのまま出願の内容としています。このことに注意して下さい。

■国際段階補正

 ここで急いで補充しておかねばならぬことがあります。それはPCT国際段階の補正のことです。PCTというのは、一つの出願書類で多数国に出願した日を確保するものでした。そしてその出願書類(及びその翻訳文)は、各国の出願書類としての効力を持っていきます。
 そもそもPCTというのは
 ・出願人の重複労力の軽減
 ・各国特許庁の負担軽減
といった立法目的があります。PCT出願をすると、国際調査が行われますが、この結果等を参照して、出願人が補正がしたいと思ったとき、「じゃぁ各国段階に入ってから、各国で補正してください」というのでは重複労力を低減することになりません。ですので、条約では国際段階での補正を許容しています。それがPCT19条です。また、国際予備審査を行ったときにも同様に補正を許容しています。そちらはPCT34条です。それぞれ19条補正、34条補正などと呼ばれます。
 両者の決定的な違いは、補正の範囲と回数です。

□PCT19条(1)第1文 (1) 出願人は,国際調査報告を受け取つた後,所定の期間内に国際事務局に補正書を提出することにより,国際出願の請求の範囲について1回に限り補正をすることができる。

□PCT34条(2) (b)第1文  出願人は,国際予備審査報告が作成される前に,所定の方法で及び所定の期間内に,請求の範囲,明細書及び図面について補正をする権利を有する。

 比較してお分かりのように、19条補正は、クレイムについてのみ、1回だけ補正が許されます。一方の34条補正では、クレイムだけでなく、明細書や図面についても補正でき、また、回数の制限がありません(時期的な制限はありますが)。

 19条補正が1回だけの補正に制限しているのは、第1章手続のストリームライン化が目されていたからです(いまどきどうかとは思います)。

 さて、こうして国際段階で提出されたPCTの書類については、我が国でどのように取り扱うかを定めておかなければなりません。19条補正の場合、それは184条の7(日本語でしたPCTについてのみ)となり、34条補正の場合、184条の8となります。また、外国語でしたPCTについての19条補正は、その翻訳文を、国際出願日のクレイムの翻訳文に代えて(または国際出願日のクレイムにさらに追加的に)提出することになります(184条の4第2項、第4項)。代えて(または追加的に)提出されると、その提出された翻訳文のクレイムで出願されたものと考える。それが184条の6第3項の内容です。

 34条補正は、こういう方法ではなく、補正書の写しや翻訳文を提出するのですね(184条の8)。なお、補正書の写を出さなかったらどうなるか。19条と34条の補正の場合で比べておいてください。

■ふーう。ここまでくると、あとは国内公表と、その他特則、そして最後の関門、みなし特許出願だな。これらは来週以降に。

□むかしはPCTというと、ほとんどこれ一冊だった、「ピー・チク」こと「PCT逐条解説。」ただし、これは論文で使える部分は少ないです。

□最近は、同じ橋本先生の「特許関係条約」が簡潔でいいと思う。

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