« ちょっとだけ電話のはなし | トップページ | 携帯する危険物 »

2007年1月30日 (火)

補正できる?

なんだか、IPDL のトップページのデザインが大幅に変更されていて驚いたが、下位のページにはあまり変更がないようだ。これから変わるのだろうか。

▽さて、のっけから、記事の誤りについて訂正させていただきます。
 今月15日に、シフト補正についての話題を掲載しましたが(「やっぱり補正できない?」)、その中で、クレイム1項だけの出願で、当該1項だけのクレイムに特別な技術的特徴がないと認められた場合、いかなる補正もできなくなる恐れがある、と記載しましたが、これは審査基準案4.3.2節の誤読に基づく記載でした。既に当該記事の該当部分は修正しております。おわび申し上げます。

■excuse を言えば…
 いや、言い訳をするつもりで言えば、この4.3.2節の説明は、本文記載では確かにクレイム1項だけの場合に拒絶されても、補正後のクレイムが、当該1項だけのクレイムとの間に単一性の要件を満足していれば、特別な技術的特徴があるかどうか判断する、と読める一方、その後の「審査の進め方」の記載がわかりにくいばかりに、誤読に至ったものであります。
 ついでのことに、マルチの場合についてですが、一応、この4.3.2節の後半によると、マルチで書いてあってもバラバラにして見る、と言っているようでありながら、負担がなければOKだという記載もあって、やっぱりあまりよく分からない状態であることにかわりないと思います。

 まったく人の日本語には文句をつけるくせに(36条とか言って)、自分のとこの日本語は不明瞭のまま発表しといて、パブリックコメントを見て自由に補正してくるんだから、人(庁)が悪いと言いたいが…。いっぺんでいいから、拒絶理由の記載不備とか、受取り拒否(いや、こりゃ違うか)とかやってみたいと思いつつ、代理人というのはそういう自由度はないのであります。

■おわびのついでに…

 「情は人のためならず」ということわざについて論争があったことがあります。最も新しいところでは、私の高校時代(20年以上も前のこと)ですが、高校の国語の題材として教師が持ってきた新聞記事の切抜きがありました。
 要するに、「情は人のためならず」とは、相手にかけた情は結局、めぐりめぐって、自分に対する他人の情として帰ってくる、という意味であるという説(第1説)と、情をかけるというのは、相手のためにならないことだ、という意味だとする説(第2説)とが対立していたわけです。
 わたし個人としては、第1説が妥当と考えますが、日本語の文言解釈から第2説を妥当とする論者も譲らず、固執されると第2説の意味にも確かに取れる、ということで、一部国語辞典では、両者の意味を正しい意味として掲載するに至った、と聞いています。

 で、私が特許技術者としては、やや経験を積みつつあったころ、当時の事務所の副所長がしょっちゅう、

「弁理士たるもの、人の嫌がることを積極的にしなきゃ。子供のころからよく言われたでしょ。」

とニヤニヤしながら言っていました。いっぱんに「人の嫌がること」というのは、人が嫌がってしないような仕事も積極的にせよ、という教えですが、ここでの彼の意味は、「人が嫌がるように、コトを運べ」という意味です。具体的にいえば、審査官が拒絶しにくいように、意見を持って行けという話ですし、コンペティターが争いにくいように明細書を記載しておくというようなことでもあります。私、この言葉は一面で至言だと思い、未だに自分が新人を教育する際に使っています。

 それはそれとして、誤りの元となった、4.3.2節の、[補正後の審査対象の決定手順]の(1)では、

第I部第2章「発明の単一性の要件」の4.2の審査対象の決定手順に従って、最後に特別な技術的特徴の有無を判断した補正前の特許請求の範囲の発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明にいて、特別な技術的特徴を有するかどうかを判断する。

とあります。曲者なのは、「最後に特別な技術的特徴の有無を判断した補正前の特許請求の範囲の発明の発明特定事項をすべて含む」と言っているところです。権利化のポイントとなるべき事項が複数あるが、権利行使をにらんで適当と思われる事項を選択して、当該事項を実施例レベルまで順次限定してクレイムする、というケースはあり得ると思います。

 簡単にいえば、特徴事項A,B,Cのうち、Aを選択して、
1.A+B+C
2.1において、構成Aは、a1を有してなる
3.2において、構成Aは、a1及びa2を有してなる

というような具合です。
 B,Cだって、それぞれに限定できるわけですが、出願・審査のコストと権利化方針との兼合いからAについてだけ選択的に流したようなケースです。
 このケースにおいて、仮に最下位概念まで公知であったなど、最後のクレイムに至るまで「特別な技術的特徴がない」と認められると、先の審査対象の決定手順からして、「最後に特別な技術的特徴の有無を判断した」クレイムは、最後のクレイム、つまり最も限定されたクレイムになりかねません。
 これは甚だ不都合です。なぜならば、Bをちょっとだけ限定すれば特許になると確信できても、Aについて実施例レベルまで限定した場合の発明特定事項をぜんぶ含んだ請求項にしなければいけないと書いてあるためです。

 と、すれば…、最後のクレイムを、最も広いクレイムにしておけばいいのではないか。

 と私は考えてしまいます※。

※単一性の要件の観点からダメだろうという指摘がありました(コメント参照)。私としては、それで単一性をいうなら、単一性の要件それ自体を争いたい。

 さいわい、引用項にした場合と、そうでない場合とで審査料金が変わる設定にもなっていませんから、最上位のクレイムを最後に持って行って、そこから限定する方向のクレイムを請求項1から順に書いて行ったら、全部のクレイムに特別な技術的特徴がない、と認められてしまった場合の保険になるのではないか。

■性
 職業上の性というか、とにかく何かルールがあれば、それを逆手にとった使い方を考えたり、書いてある内容を都合のいいように解釈できないかどうかを考えるクセがついているのです。それによって相手が嫌がるように、と考えてしまうのです。客観的に言って、私のような人間は社会で嫌われるのではないかと思っているところです。

 そういえば、大学院生のころ、お邪魔した教授宅で、私の担当教授(物理学)と、その教授の友人の某研究機関の研究者(同じく物理学)の方とが、日常の言葉の使い方をめぐって冗談めかした論争を始めたとき、その教授の奥様が、私にむかって、

「嫌ですわねぇ、物理学者って。…あなたもそうね!」

と。いや、奥様。私はまだ物理学者ではありません。そう言えば言ったで、やっぱり厳密で嫌だと言われるだろうし、答えに窮したことを思い出しました。

 …何の話でしたっけ。そうそう、記事の訂正でした。改めまして、

おわびして訂正致します。

|

« ちょっとだけ電話のはなし | トップページ | 携帯する危険物 »

コメント

 審査基準の肩を持つ気はさらさらないのですが(どう考えても単一性の判断基準がおかしく、その結果不必要に技巧的かつ複雑になってしまっているので)、上記のような抜け道はたぶん現行の改定案には存在しないと思います。例えば
CL1:A、B、Cを含む装置
CL2:A、Bを含む装置
CL3:Aを含む装置
で出願し、いずれも新規性がなかった場合、まずCL1が審査され、その結果、STFなし、となります。すると、単一性の判断基準に照らして、およそこの世のあらゆる発明が(全く文言同一のクレイムでさえ!)、CL1との間で単一性の要件を満たしません。で、この場合でもお情けで審査をしていただけるクレイムが発明の単一性の審査基準改定案P11に記載されていますが、上記例の場合、CL2もCL3もそもそもP11の①の要件を満たしません(CL1の発明特定事項をすべて含んでいない)。
 よって、審査基準の記載どおり厳格に運用されれば、この場合、CL1が29条1項違反、CL2及び3が37条違反で拒絶されます。そして、この拒絶理由通知に対する補正時には、審査対象となったCL1に対して直列従属なクレイムを記載しなければ、シフト補正要件違反です。要するに、残念ながらCL2以降は全く相手にしてもらえないと思われます。まあ、この例の場合、CL1の審査が終わった段階でCL2,3に新規性がないことは明らかなので、37条違反はかなり違和感を感じますが、現行の単一性要件のもとで論理一貫してシフト補正禁止の趣旨を全うしようとすると、こういう取り扱いになるんではないかと。
 ま、特許庁としては、変な抜け道を考える暇があったら、ちゃんと先行技術調査やって新規性のあるクレイムを書いてから持って来いということなんでしょうけどね(:-P。

投稿: Kaz | 2007年1月30日 (火) 12時22分

困ったもんだね。

それで37条違反だということになったら、とことん争って、施行規則や審査基準の是非を問うてみたいものだが。

いや、思ったんだけど、基本的に最後にクレイム1のコピー(というかカテゴリを変えたコピー)がついていればいいわけだ。装置で流して、方法かプログラムについて、装置最上位に対応するクレイムをつけとくってことでいいのかな。

あ、それと、特別な技術的特徴の有無は新規性そのものじゃないから、新規性があっても特別な技術的特徴がないと認められる場合がある。つまり出願前の予測性がなく、調査も万全といえない場合が多いことを考えれば、権利化がむちゃくちゃやりにくくなる。分割を厭わないならいいんだけどね。それなら分割が増えるわけで、結局審査滞貨は減らない。って、こんなことに特許庁が気づいてないとは思いたくないのだが。

投稿: ntakei | 2007年1月30日 (火) 15時28分

> いや、思ったんだけど、基本的に最後にクレイム1のコピー(というかカテゴリを変えたコピー)がついていればいいわけだ。

 なかなか懲りませんね(^^;
 前述のP11、①には、CL1の発明特定事項をすべて含む「同一カテゴリー」の請求項に係る発明のうち・・・とあります。つまり、カテゴリが違えば審査しない、と言ってると思われます。すなわち
CL1:A手段、B手段、C手段を含む装置
にSTFが認められなかった場合、
CLx:A手順、B手順、C手順からなる方法
も、
CLy:A手段、B手段、C手段を実行させるプログラム
も、CL1との間で単一性がなく、37条違反だと思います。かなり意味不明、というかもはや多項制の趣旨はどこへやら、という感じですが、特施規25条の8第2項の単一性要件が諸悪の根源なので、今回の改正についてどうこう言ってもある意味仕方ないというか。
 まあ、今のところまだ案ですし、最終的にはもう少しまともなものになるかもしれません。

> それなら分割が増えるわけで、結局審査滞貨は減らない。って、こんなことに特許庁が気づいてないとは思いたくないのだが。

 邪推すると、審査滞貨が減らずとも、1件あたりの工数が減って処理件数が増やせればいいんじゃないでしょうか。「年間の処理件数は(37条違反でバンバン拒絶して)こんなに増加しました、でも出願件数が増えたから審査待ち期間は短くなりませんでした。みんなが出願増やしたのが悪いんであって、我々が怠慢だったわけじゃないんですぅー、だから審査待ち期間が増えても我慢してね」という論法が使えるので。

投稿: Kaz | 2007年1月30日 (火) 17時43分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 補正できる?:

» 漢字の読み方・何と読むでしょう?【漢字検定必勝ブログ】 [漢字検定必勝ブログ【漢字検定らくらく合格!】]
■次の言葉はなんと読むでしょう?生き物に関する漢字ですO問題1)甲虫2)蛞蝓3)猪4)鶉O答えは [続きを読む]

受信: 2007年1月30日 (火) 19時29分

« ちょっとだけ電話のはなし | トップページ | 携帯する危険物 »