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2007年1月 5日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(18)

あけましておめでとうございます。本年最初の通常更新です。今年もよろしくお願いいたします。

▽ 年末の慌ただしいなか、新たな審査基準案が公表されました。この審査基準案の具体的内容については、いずれ別稿の記事とさせて頂くとして、受験生の方々にとって興味のある内容としては、37条関係の審査基準改訂ではないかと思われます。この改訂はいわゆるシフト補正の取り扱いに伴って改訂されたものということですが、単一性の取り扱いが多少、変わるわけです。取りあえず、ご参考まで。

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/iken/iken_isyou_bunkatu.htm

なお、今回の改正については、既に改正本も販売されているようなんですが、amazon ではまだ出ていないようですねぇ。

■一般承継
 さて、前回の内容を受継ぎまして、今回は裁定手続についてです。が、その前に、ふと気がついたことを。それは「一般承継」のことです。
 一般承継は、また包括承継とも呼ばれます。弁理士試験では、「相続その他の一般承継」とだけ記憶しておけばなんとなく、相続のことなんだな、という理解はできます。これで不十分になることも多くありません。しかしついでのことに、その意味も、対語も知っておくと便利かもしれません。
 一般承継、すなわち包括承継とは、端的には民法八九六条本文に定められた承継のことです。

□民法896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

まず断っておきますが、弁理士試験で一般承継を説明する際、この条文を挙げても誰も加点してくれないと思います。さて、この条文で重要なのは、「相続開始のときから、…一切の権利義務を承継」というところで、相続人の意思表示などの必要なく、包括的に一切の権利義務を承継するところに意味があります。
 これに対する語は、「特定承継」で、こちらは売買など。要するに特定の財産等を承継させることです。包括的に承継させるのではなく、特定の対象を承継させているわけですね。
 そして気になるのは、「相続その他の」の、「その他の」の部分。法律用語で「その他の」とある場合は、「相続」が例示の一つにあたる場合なんですよね。ということは包括的承継には、相続以外のものがあるわけだ。それは何かというと、例えば法人の合併です。法人の合併ではやはり包括的に権利義務の関係が承継されるわけです。
 要するに一般承継というのは、相続や法人の合併などのように、財産等を包括的に承継することをいうものと考えておくとよいでしょう。

■裁定手続
 それでは、話を本筋に戻しまして、裁定手続です。
 特許法における裁定手続の規定は、不実施の場合の裁定手続を原則として、その後の利用発明ライセンス(92条3項)やそのクロスライセンス(92条4項)、公共利益のためのライセンス(93条)において準用する形を取ります。さらに注目して頂きたいのは、90条2項。裁定取消の手続でも裁定の手順が準用されていることです。

□90条2項 第84条、第85条第1項、第86条第1項及び第87条第1項の規定は前項の規定による裁定の取消しに、第85条第2項の規定は通常実施権の設定を受けた者が適当にその特許発明の実施をしない場合の前項の規定による裁定の取消しに準用する。

 もうちょっと各規定を詳しく見ましょう。

84条では、裁定請求があったときに、被請求人に対して、長官から請求書の副本が送達され、指定期間内に答弁書を提出するよう求められることが規定されています。85条1項。こちらは審議会等の意見聴取を要するとあります。なお、85条2項は、不実施の場合に特有の規定です。86条は裁定方式として、「文書をもって」範囲や対価の条件等を定めるべしという規定。87条1項は裁定謄本の送達をするというもので、87条2項は、裁定により協議成立を擬制するという規定です。

 駆け足でしたが、これらが手続のはなし。88条や89条は、対価供託や対価を支払わなかった場合に裁定が失効するという話です。例のごとくフローに並べると、

裁定請求
 ↓
副本送達・答弁書
 ↓
審議会意見聴取
 ↓
裁定(範囲・対価)
 ↓
謄本送達
 ↓
協議成立擬制

という流れですね。
このフローに対して、準用の状況を書き並べてみます。

基本
83(2) 裁定請求 92(3),(4)  93   90(取消)
84 副本送達・答弁書  ○   ○
85(1) 審議会意見聴取  ○   ○
86 裁定(範囲・対価)  ○   (1)のみ
87(1) 謄本送達  ○   ○
87(2) 協議成立擬制  ○   ×

マルは準用あり、バツは準用なしです。
なお、85条2項は誰も準用していません。さっきも書きましたが、不実施の場合に特有の話だからですね。

実のところ裁定手続は一次試験での出題の宝庫の一つです。各法域(特許・実案・意匠)で規定が微妙に相違し(なお商標には、そもそも裁定使用権の規定がありません(制度になじまないから、というのが理由です))、また準用条文も多く、整理が行き届いていないと正答が難しいからではないかと思います。よく整理して条文を理解している人を選抜するのに適した部分とでも考えているのではないかと思います。例えばこんな問題はどうでしょう。

□例題
 他人の意匠権に係る意匠またはそれに類似する意匠の実施が、公共の利益のため特に必要であるときは、その意匠を実施使用とする者は、意匠権者または専用実施権者に対して通常実施権の許諾について協議を求めることができる。

 答えは、当然…ですね。特許法93条に類する規定が意匠法にあるかどうか。産業財産権四法対照法文集〈平成19年度版〉などで確認してください。

 というわけで、実施権の規定を概観致しました。次は、審決取消訴訟あたりへ移動しましょうか。それとも184条3項以下に行こうかな。

□四法対照条文集

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