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2007年1月18日 (木)

弁理士報酬のはなし

弁理士というのはどうにもノンポリな人が多い気がする。もともと理工系の人間が多いせいか、政治的な考え方に対して引っ込み思案になっているのかも知れない。いずれにしても総会が開催されても定足数が気にされる有り様だし、提出される議案についてはほとんど「承認」されることになっているんじゃないかと思う。

▽ それゆえに、平成18年度第1回臨時総会(平成18年12月14日)において、第2号議案が「◎撤回」となったのは目を惹いた。

■第2号議案
 この第2号議案は、会令として「弁理士の報酬に関する規則」というのを制定しようという案であった。この案では、

  • 報酬を事案の難易度、時間、労力等の事情に照らして合理的に定めるべきこと(2条)、
  • 報酬に関する基準を作成しておき、事務所に備え置くべきこと(3条1項)、
  • 受任時に、受任する業務範囲、報酬・費用の種類、金額、算定方法、支払時期、そして業務が途中終了したときの精算方法について合意をするべきこと(4条2項)
  • 見積りを求められた場合は、見積りを作成すべきこと(5条)

 などを定めていた。

 昔のように報酬基準表を作成してまではいないようだが、比較的具体的な内容まで定めようとしたのが敬遠されたのだろうか。それにしても「撤回」って何だろう。
 なお、会則41条の2として

□会則41条の2 会員は、弁理士の報酬を合理的な算定根拠に基づいて定めなければならない。
 会員は、依頼者に対し弁理士の報酬等について必要な説明をし、理解を得るよう努めなければならない。

 という規定は導入された(第1号議案)。

■「わかりにくいです」
 報酬といえば、つい最近、登録5年ごとの義務研修ということで「倫理研修」に行ってきたのである。講師は案内では「弁理士」とあったが、実際には弁護士・弁理士であったらしい。弁護士に比べれば、弁理士はよく法令遵守しています、と持ち上げていた(なんだそりゃ)。そして、トラブルの起こりやすい事例として、個人会社からの受任で報酬に関する事項が明確に説明されていなかった(あるいは説明をしたのに忘れられた?)ケースが紹介された。
 以下、講師の言を引用する。

「(士業のうちでも)弁理士の報酬ほど分かりにくいものはないんじゃないですか。弁護士は、着手金と、結果報酬ですし…、司法書士だって手続ごとに報酬が決まるでしょう。」

「…(採るべき手続が条件で枝分かれして)こうなったらこの手続とこの手続とがあって、とか。そしてそれぞれで料金が違うとか…」

とにかく、わかりづらいですよ」

 うーん、確かに分かりにくいから説明もし難いし、詳しく説明し過ぎると敬遠されるしなぁ。それで敬遠された上で妥当と思う手続で進めた結果、お客の考えと違う方向へ行き、そのうえで報酬請求したら、そりゃ怒られるわけだ。

■分類してみると
 請求するタイミング別に報酬を分類してみると、おおまかに言って、

  • 受任時(着手金)
  • 出願手続時[約25−65万円:内容による]
  • 中間処理時[おおよそ5−30万円:内容による]
  • 登録時
  • 登録変更時

となるのではないか(継続的に受任できない国内顧客が、国内出願する場合)。括弧内は、あくまで参考であるが、単発的な顧客に対しては、出願から登録までで100から150万円程度の請求になる(これが数年に分けて請求される)のが、一般的な事務所の料金だと思われる。
 なお、個人客相手の場合は、内容が簡単な場合が多いため、経験上、出願手続が約30万円程度になることが多い気がする。ただし個人客では、中間処理に手数がかかることが多い(お客様側で方針が定まらないので相談等の回数が増大する)ので、中間処理時の請求は高めになり、事務所基準をそのまま適用すると、場合によっては40万円を越える。

 多くのお客様は出願時点から手続を依頼される。このときに発生する手数料についてはあまりトラブルになったとは聞かない。予め見積りか何かを出しておくのがふつうだからだろう。一方、中間処理や登録時にはトラブルになりやすい。出願時点で十分説明しても、出願の時点から中間処理の発生までに約5年(審査請求期限3年+審査待ち2年)を要するため、忘れられていたり、担当者が代っていて、伝えられていないことが多いためだろうか。個人客の場合は、上述のように中間処理手数料が一般的に高額になるのも一因かも知れない。
 さらに、

「出願したら特許」

という勘違いが意外に多いのだ。このことにも原因があるような気がする。

 かててくわえて、「拒絶理由」という強烈な書面がくるので、

「あの代理人にやらせたらオレの発明が拒絶された。」

ということになって逆上してしまうケースもあるようだ。これはいくら、「一度は拒絶されるようにして補正のチャンスを作るのが一般的ですよ」と説明しても意味はない。我々代理人側の対策としては、少なくとも一つ、ベタベタに限定して、ほとんど必ず特許になるだろうクレイムを用意しておくだけである。これが用意できればのはなしだが

■だからといって、
ある大手事務所の所長氏のように

「うちじゃぁね、紹介のない新規のお客からは最初から着手金として中間処理まで貰っちゃう」

というのでは、新規客は要らない、と言っているのと変らない。いや、まさにこの所長氏の場合は、まさに今の顧客以外はお断りという姿勢なのであろうが。

「えっ。いったいいくら請求するんですか?」

という問いに、その所長氏は、

「70万円」

と言いきった(これを迷いもなく言いきるところが凄いとおもう)。着手金だけで70万円? 結果として出願しないことになったらどうするんだろう。だいいち、それだけ取っておいて本当に中間処理時の請求を「0」にするのだろうか。酒の席だったので、詳しくつっつかなかったが、こりゃこれでトラブルになりそうだなぁ。

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コメント

ntakeiさん。
こんにちわ。
先日は、コメント有難うございます。
拝見して、問題文から厚く書くべき項目を書く訓練をする必要が
あるんですね。
過去問からこの訓練をしたいと考えています。
色々試行錯誤しながらやらないと駄目なんですね。
論文は、難しいですね。
事例問題は、パズルみたいなものだと聞きましたが、自分なりに
答案スタイルを身につけたいと必死です。
これからもその為の勉強方法是非お願いいたします。

投稿: ぴょん吉 | 2007年1月18日 (木) 09時05分

個人(やそれに近い小企業)のお客さん、
天動説的キャラクターが多くて、正直やりにくいです。
どこかで聞きかじった中途半端な知識で、頭が凝り固まった人は、
特にしんどい・・・

投稿: | 2007年1月18日 (木) 13時10分

>ぴょん吉 様

問題文を分析して、記載するべき項目を列挙したり、それぞれの項目の記載量を調整する方法は、試行錯誤というよりも、一種の方法論という気がします。そのうち、書ければまた書いてみたいですね。

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>天動説的キャラクター

おもしろい表現ですね。私の個人的経験では個人客、準個人客でなくても、相当する方はおいでかなと思います :)。
しかし、個人のお客様もお客様ですし、大小問わずいろいろ知的財産権保護・利用の調整を図るのが弁理士の使命でもあるということで(我ながらキレイゴトだなぁ)、お互い頑張りましょう!

投稿: ntakei | 2007年1月19日 (金) 01時07分

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