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2006年12月14日 (木)

ロケットのごとく

 新幹線のぞみ号は場所によっては時速270kmあまりの速度で走行する。あまりの高速走行のため、「のぞみ」車体が線路から受ける垂直抗力は徐々に減少し……まぁ、要するに空中に浮いている状態で約1kmばかり走ってしまうこともあるようだ。これが航空機になるともっと速度が高くなり、もっと速度を高めて、地表に水平に秒速7.9km以上の速度で移動させると、その物体は地表に落ちてこなくなる。これが第1宇宙速度と呼ばれるものだ。
 地球の重力圏を脱出するためには秒速11.2kmが必要となる。これは第2宇宙速度と呼ばれる。ロケット自体はそこまで高速でなくてもよいはずだが、航空機よりは高速である印象がある。

▽ 米国で、この11月19日に先行して発売された、任天堂のゲーム機、wii は、またたく間に売りきれたという。日本でも遅れて今月初めに発売されたものの、現状では品薄の状態が続いている。その wii がまぁ、早くも特許訴訟に巻き込まれたというニュースである。

□ wii。まだ amazon では予約も不可能。06/12/14現在の販売価格はおそらく転売品のもの。

■USP6850221
 この訴訟。wii に付属する Wiiリモコンが特許侵害品として訴えられたのである。
 原告(Plaintiff;π)はインターリンク・エレクトロニクスという企業。特許番号は USP6850221 である。第一クレイムは、次の通り。

1. A portable, trigger operated pointing device for use with an electronically responsive system, the pointing device comprising:
(イ) a housing for location at least partly between a first finger and a thumb of a user's hand, the housing having a generally straight, elongated profile defining a longitudinal axis and having a forward end, a rear end, opposed sides, a top face, and a bottom face, the bottom face including a contoured step positioned medially of the forward and rear ends and transversely of the opposed sides, the contoured step having a first face for generally providing a rest location for the first finger of the user's hand;
(ロ) an electronic circuit mounted on a board contained within the housing, the board having first and second opposed sides, the electronic circuit including a first switch on the first side of the board, the first switch being responsive to pressure selectively to open and close the electronic circuit such that the electronic circuit generates a first output signal upon operation of the first switch, the electronic circuit further including a second switch on the second side of the board, the second switch being responsive to pressure selectively to open and close the electronic circuit upon operation of the second switch;
(ハ) a first control element mounted with the housing at the first face of the contoured step and operatively connected to the first switch to be responsive to finger pressure such that pressure applied to the first control element causes the first control element to operate the first switch;
(ニ) a second control element mounted with the housing at the top face and operatively connected to the second switch to be responsive to thumb pressure such that pressure applied to the second control element causes the second control element to operate the second switch;
(ホ) and an output signal emitter responsive to an output signal from the electronic circuit to wirelessly emit the output signal for reception by the electronically responsive system.

 括弧内の符号は私が付したものだ。長々と読みにくいクレイムだが、サマリーなどを参酌すると、要するにパッド等に置かなくてもポインティング操作が可能なマウス(ポインティングデバイス)を提供したいらしい。そう言われて読めば、(ハ)や(ニ)の構成や、(ホ)のように無線接続される構成などがそれっぽいが、いずれにしても特徴事項が分析しにくい。今回は時間も割けないので、分析は措く。

■ロケットのように
 さて、本件訴訟はデラウェアの連邦地方裁判所に起こされている。πであるインターリンク・エレクトロニクス社はカリフォルニア州、そして被告(Defendant;Δ)の米国任天堂はワシントン州である。どうしてデラウェアが選ばれたものか、というと、それはおそらくデラウェアの地裁がロケットドケット(Rocket Docket)を採用しているからである。

 ロケットドケットは、約8月というわずかな期間のうちに結論を出すという方式である。このために、裁判所からの期日の追い立てが厳しいと聞く。それゆえに訴訟前準備を十分に行い得るπ側に有利なのである。

 ただし、今回の場合は対象製品の発売から間もないことを考えると、πとしても、それほど入念な準備が行われたものであるかどうかが疑わしい気もするが…。

■訴訟の使われ方
 さて、米国の訴訟についての過去の記憶を呼び起こしてみるに、たしか訴状提出から120日を経過するころ(※)、召喚状(Summon)がΔ宛に送達され、訴状に対して20日以内に応答せよ、との命令が為されることになる。この命令に従わずに応答を提出しないと、Δに不利な結果に終わることになる。ディスカバリーやデポジションは、この召喚状以降に行われるのだと記憶している(このあたりは事務所にいると、そうしょっちゅう経験することでもないので、資料をひっくり返さないと記憶が怪しい)。

 また米国の訴訟費用は一律150ドルとお得になっている。

そこでπとしては、採りあえず訴訟を起こしておき、訴訟を取り下げてほしければ手続きが始まる前に結論を出せといってライセンスを迫るわけである。Δは早急に、ライセンスを受けるか、訴訟へ突入するかという選択をさせられる羽目になる。
 基本的に敵対的なライセンスになりそうだが、訴訟がこのように使われる場合があるというのは、以前、某著名米国弁護士の講演で聞いた(彼はいま某巨大IT企業に在籍しており、そういえば先日彼の父親に久々にお会いしたとき聞いたところでは元気にやっているそうである)。

 wii の出荷台数を思うと、しばらくのあいだ、この訴訟についての動向は気になるところである。

※やっぱり記憶、怪しかったですね。連邦民事訴訟法4条のことですが、訴状を裁判所に提出してから120日以内に、πが、Δ宛に訴状を送達しなければならない規則になってます。このとき召喚状も一緒に渡すわけです。訴答手続が始まってしまうと、Δ側もいろいろ大変なので、この120日のうちに態度を決めろと迫るということでした。

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コメント

この特許、日本でも成立しています。
特許3534776号「トリガ作動の電子装置」(登録日:平16.3.19)
権利者はインターリンク エレクトロニクス インコーポレイテッド
はてさて、日本でも侵害訴訟が起きるでしょうか?
==大ネコ

投稿: 大ネコ | 2006年12月17日 (日) 22時59分

この原告(Interlink Electronics Incorporated)は、
USP5670988 に基づいて、Michigan, Eastern Dist.にて、
X-10 USA Incorporatedを被告にする侵害訴訟を
1999年9月17日に提訴しているようです。
なお、Docket Number: 99-60576 です。
==大ネコ

投稿: 大ネコ | 2006年12月17日 (日) 23時14分

大ネコさま

いつもコメントありがとうございます。
どうでしょう。販売台数としては日米が最も多いのでしょうか。そうとすれば、米国での訴訟動向を見ながら日本でも、と計画しているかも知れませんね。

しかしそれにしても凄いクレームですね。

投稿: ntakei | 2006年12月18日 (月) 01時13分

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