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2006年12月27日 (水)

聞くは一時の…

それはもう10年以上も前のこと。大学院生室というところでソファに転がっていた私は、同窓生の受けている電話に聞き耳を立てていた。「はい…アルミニウムの線膨張率はですね、温度によっても違ってですね…。」何を電話に向かって講義しているか、と思っていたら、彼は電話を切るなりこう言った。

 どうして、金属の膨張率なんて、どこでも調べられるものをどっかの工場のオッサンから質問されなければいけないんだ。

▽ 要するに、大学院生にでも聞けば分かるとおもって便利に使われたのだろう。

■質問があります!
 事務所というところでも、外部から質問を受けることがある。むろん、一般からの質問を一々事務所で受けるわけにはいかないから、クライアントからの質問におおかたは限られる。中小企業からの質問では、比較的実際的なことが多い。

先日出願した特許を使った製品ですがね、表示ってどうしたらいいんですかね。

 そりゃまぁ、「特許出願中」と書くか、「PAT. P.(Patent Pendingの略)」と書くかである。出願番号を入れてもあまり意味はないから、せいぜいこの2種類のいずれかと思われる。

 一方、弁理士といえども手続の子細な部分になると時折困ることがある。こういう場合は特許庁やWIPOに直接問い合わせることになる。ちなみにWIPOへの問い合わせは日本語でできる。日本人の担当官が特許庁から派遣されているのである。

■特許庁
 特許庁の電話応対は近ごろ変った。以前は必ず交換台の女性が応答したのだが、いまは機械音声で、「内線番号が分かっている方は2を…」といった具合だ。
 シンプソンズというマンガで、警察に電話をしたところが「犯人をご存知の方は1を…」という長々応対で…、という冗談があったのを思い出した。
 いや、脱線だ。この機械音声の応答では、拒絶理由通知についての質問で、審査官の内線番号が分かっていればこれは便利なのだが、質問先が不明瞭な場合や内線番号が分からないときには交換台を待つことになる。
 交換台では、ある程度相談の内容をいうと、関連していそうな部署へ回してくれる。正しいこともあるが間違っていることもある。
 たとえばPCTの場合、指定官庁と受理官庁とのどちらかに問い合わせることになるのだが、こちらの説明が分かりにくかったのか、国内移行手続のように指定官庁に問い合わせるべき内容を説明したのに、

受理官庁にお繋ぎします…

と言われることがある。こちらもウッカリ、「ハイ」などと答えてしまうものだから、受理官庁の人からウンザリした声を聴くことになる。

 まぁ、それはそれとして、特許庁の人たちは比較的親切に手続の内容を教えてはくれる。ただし、彼らにしても誤っていないとは限らない(!)ので、回答者の氏名を伺っておいたりという防衛策のほか、回答の内容について法文を参照して検討をしておく自衛策も怠ることができない

■裁判所
 裁判所もまた、いろいろ親切に教えてくれる。場面によっては特許庁よりもずっと親切である。

 先日、私は、某著名な先生から裁判所のことについて聞かれた。先生は、判例集を探索するうち、「民集」というのに知財判例が少ないことに気づかれたらしい。「民集」とは、「最高裁判所民事判例集」のことで、最高裁判所で為された民事裁判の判例を集積した書である。最高裁判決は法源としての意味もあるから重要な書であることに相違ない。先生の質問というのは、

「民集」っていうのは、全件収録しているんじゃないんでしょうかね。採録基準というのがあるんでしょうか。

というものだった。どういう根拠で私が裁判所の、こんな細かいことを知っていると誤解したものか、それは分からないのだが、取りあえずできる範囲で調べてみますよ、とだけ申し上げておいた。

 持ち帰って知りあいの弁護士に聞いてみると、「さぁ」という誠に頼りなげな返答である。最高裁に直接聞いてみれば、というのが彼のアドバイスだった。親切に教えてくれるという。

 そこで恐る恐る最高裁に電話をして交換台に相談を持ちかけると、広報室というところへ繋がれた。いや「広報」だろうか、ミンジなんとかとか、そういう部署じゃないのか。不安が広がる。電話に出たのは広報担当の女性だった。

「つかぬことを伺いますが」と、私
「はい。」と電話先の女性。
「民集、というのがあるかと思いますが。」
「判例集の民集ですか。はい。」
「あれって全件が収録されているのでしょうか」
「いいえ、選抜されています」 驚いた。即答である。
調子づいて、私は続けて聞いてみた。
「では、その採録基準というのは…」
「それは分かりません」 ええっ? こちらが当惑しているうちに、彼女は続けた。
「…というのはですね、おそらく内部的には委員会のようなもので決まるんだと思うんですが、裁判官が判例として後の案件に意味があると思うものを収録しているわけでして、具体的な基準があるわけではないんです」 とのことである。

 大層わかりやすい回答であり、この内容をお伝えして、かの先生にも納得頂いたわけであるが、裁判所もこんな電話相談に答えて下さるとは。…たいへんありがとうございました(って、読んでいるわけないか)。

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