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2006年12月18日 (月)

乱読日記[36]

パトリス・ルコント,「タンゴ」

▽ 同名の映画作品の脚本を、小説風に書き下した(と思われる)作品。

□ パトリス・ルコントの描く恋愛ものは、どこかしら奇妙なところがある。とはいえ、「髪結いの亭主」を観たのはもう随分と前のことだから、記憶はかなりアヤシイんだけど。そのルコントのコメディの一つが、この「タンゴ」(1992年作品)である。

ものの評によると、あの「仕立て屋の恋」のルコントとは思えない…とあるが、本当にそうかどうか。「仕立て屋の恋」は観たことがないのでよく分からないが、根っこの部分がそう変らないんじゃないか。

□ 物語は、アクロバット飛行をして空中に商標を描くのを生業とする、セスナ機操縦士の男(ヴァンサン)の話から始まる。ヴァンサンの妻は、ヴァンサンが空に商標を描くのを眺めながら、家に引き込んだ男と不倫中である。旦那の居場所が確実だから、堂々と浮気をしているというわけだ。ところがその日、空に描かれた商標の文字はどこかが違って見え…

□ 映画の「タンゴ」では、不倫相手の男が慌ててBMWで逃げていくさまと、それをVWビートル(旧ビートル)で執拗に追い回すヴァンサンの姿とがたいへん滑稽に描かれている。「ワルキューレの騎行」をBGMに、華麗な運転で山中の道を駆け抜けるVW。対するBMWの男は慌てているためか覚束ない運転だ。結局BMWは崖から転落してしまい、相手の男は助からない。

□ 妻も手にかけてしまい、殺人罪に問われる法廷でのヴァンサン。法廷では、「洒落者(エレガン)」というニックネームの裁判長から、無罪を言い渡される。呆然自失のヴァンサン。しかしながら、これにはエレガンの壮大な計画があったのだ。

□ 物語の最後の「主人公」は、ポール。エレガンの甥である。浮気の現場を目撃され、妻マリーに逃げられている。妻のいない生活にうんざりしてエレガンに相談に行く。エレガンは完璧な独身主義者だ。ポールはエレガンからそのうち慣れるさ、と説得される。「だめだよ、慣れっこないさ。」とポール。

「彼女が出ていったとき、うまく厄介払いできたと思ったんだ。」
「マリーが出ていってから、以前にもまして彼女が身近に感じられるんだ。」
「死ねばいいと思った日もある。」

その途端、エレガンの計画が発動する。ポールの妻殺しをヴァンサンに行わせるのである。この壮大な計画のために、ヴァンサン、ポール、エレガンの奇妙な三人組の殺人旅行が始まる。

□ 映画シナリオの小説化ものというと、あまり期待できないのが普通だ。映画では情感豊かに描かれていたはずのシーンも、拙い表現で表わされると、味気ないのである。
 その点、この「タンゴ」の小説は、見事に映画の味わいが再現されている。じっさい、映画を観てからこの本を読むと、映画のシーンが克明に思い起こされる。
 とはいえ、そこは映画監督のパトリス・ルコント。やはり映画を先にご覧になることをお勧めしたい。「タンゴ」は、いっぱしの恋愛論などを聞くよりも雄弁に、かつ単刀直入に男女間の問題に迫っている。愉しく、部分的に哀しい。作品としてはB級な雰囲気で、大劇場のビッグなスクリーンで上映されるようなものではなく、吉祥寺バウスシアターとか少人数劇場向けの作品であると思うが、観ていて気分のいい快作である。

□その他、著名なルコント作品:
・「仕立て屋の恋」

・「髪結いの亭主」

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