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2006年12月 1日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(14)

裁判官も大変だなぁ、と思うことがあります。そもそも法律上の争訟でない事件を持ち込まれたうえ、却下すれば、「分かってないマスコミ」から叩かれたりもしますし、事件として採り上げられるものの中にも、意味不明な訴訟があったりするわけですから。知財事件なんか意味不明事件の一種じゃないかと思うこともあります。

▽ だから、というだけでもないのですが、特許や商標など専門性の高い事件については、専門官庁である特許庁で、準司法的手続に従う判断がされます。こういうのを「審判」と呼んでいるわけです。海難審判なども同じような趣旨ですね。

■ 審判規定を概観
 まず、特許法の審判規定を概観致しましょう。特許法の場合、審判の規定は121条から始まります。

□121条(1項)
 拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から30日以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。

□123条(1項柱書)
 特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、2以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。

□125条の2(1項柱書)
 特許権の存続期間の延長登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その延長登録を無効にすることについて延長登録無効審判を請求することができる。

□126条(1項柱書)
 特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。

 それぞれ「拒絶査定不服審判(121条)」、「無効審判(123条)」、「延長登録無効審判(125条の2)」、「訂正審判(126条)」と呼ばれます。なお、審判規定は各法律ごとに少々異なり、例えば意匠や商標法には、「補正却下不服審判」が残っておりますし(特許法では削除された)、商標法には、「不使用取消」、「不正使用に基づく取消」、「代理人による不正登録」などの審判があります。

 さて、これらイントロ部分にある条文は、どれも「どういう場合に請求できる審判であるか」を規定しています。こういうのは審判規定の定義を求められたときに役立ちます。例えば無効審判でいえば、「瑕疵ある権利を遡及的に消滅させるために請求し得る審判をいう」というわけです。遡及的じゃないのもあるじゃん、と言われそうですが、原則としては遡及消滅させることになるのですから、定義としてはこれで十分です。

 さて、規定に戻り、続いて127条以降では、審判請求手続や審判における具体的手続、が規定されます。特に131条以下には、だいたい時系列順に手続が書かれているので、フォローは比較的容易でしょう。なお、この流れにおいては、共通的な規定を先にし、個別の審判での規定を後(158条以下)にする順序になっています。

■ついでに再審
 ついでのことに、再審の規定まで踏み込んでしまいます。再審規定は、再審請求ができる者(171条)、詐害審決の場合(172条)、請求期間(173条)の後は、審判規定を準用しているだけです。特に174条において、1項で手続の共通規則、2項で拒絶査定不服審判に対する再審独特の規定、3項で無効及び延長無効の再審独特の規定、4項で訂正審判に対する再審独特の規定がそれぞれ規定されており、この準用条文を一通り追いかけておけばだいたい頭に入るでしょう。当然のことながら(?)準用されていない規定などもあり、一次試験で出しやすい条文となっています(実際の出題はそれほど多くはありませんが)。

■手続の流れの規定
 判定の規定を説明したときに書きましたように、流れのある部分ですから、図で書いていけば分かりやすいです。なお、共通部分を抜き出す意味で、無効審判内での訂正請求については流れから除いています。

(1)請求時
 請求書、請求方式(131) + 訂正の場合、訂正に係る明細書/図面
※請求書の補正は要旨変更不可(131−2) 但無効審判以外は、請求の理由についての補正は、要旨変更を容認。
※共同の場合、権利者全員でする/される必要あり(∵合一確定の要請)、中止・中断もあり(132)

(2)請求書/請求
 A.請求書が131条違反
 B.請求が
 ・成年被後見人等の手続能力の規定(7)に違反、
 ・委任代理人の代理権範囲(9)違反、
 ・方式違反、
 ・手数料未納、不足等
     の場合

  → 補正命令 → 審判長が決定却下可能(133) → 審決取消(178(1))
                         または、行服(請求手続に係る場合)
 ※請求自体は審決取消訴訟へ、請求手続を含む手続は行政不服審査法に基づく手続へ

 (3)手続が不適法
 請求外の補正不可不適法手続 → 審判長が決定却下可能(133−2):弁明書提出機会あり
                                  → 行服へ

 (4)請求が不適法
 補正不可不適法請求 → 審決却下(135):答弁書提出機会なし

 (5)以降の手続
 答弁書提出機会(134)→副本送達、審尋可能
     ↓
 合議体形成(136)
     ↓
 審判官の指定、故障(137)
     ↓
 審判長の指定(138)
     ↓
 除斥(139) ←除斥申立(140):方式、疎明(142)
 忌避(141)
     → 除斥・忌避の決定(143)、手続停止(144)
……

 既にどこかで書きましたが、審判手続の規定を読むときは、「請求書」、「請求」、そして審判での「手続」の3つを峻別しておくことがキーです。決定却下になるもの、審決却下になるもの、それらにさらに不服を申し立てる場合の行き先、それぞれがこれら3つのどれでどうなるかが決まるからです(おさらいとして、条文を参考に表にしてみて下さい)。
 また、もう一つのポイントは、合議体が構成されるまでの期間です。合議体構成前までは長官(実際には特許庁の方式担当官)が処理します。このように長官が処分する場合の根拠条文は17条3項です。

□17条(3項)
特許庁長官は、次に掲げる場合は、相当の期間を指定して、手続の補正をすべきことを命ずることができる。
1.手続が第7条第1項から第3項まで又は第9条の規定に違反しているとき。
2.手続がこの法律又はこの法律に基づく命令で定める方式に違反しているとき。
3.手続について第195条第1項から第3項までの規定により納付すべき手数料を納付しないとき。

 要するに133条所定の決定却下に対応する手続却下は、特許庁長官ができるわけですね(18条1項)。

 このように、総則にある手続事項は、いつでも登場する可能性があるということです。こういうことに注意するのも、審判規定のポイントの一つではないかと思うわけです。

 長くなってしまいました。言いたいこととしては、手続の場合、流れを図解することで、理解が助けられるということです。なお、でき上がった図解を眺めるのと、実際に目と手を使って図解を作成する作業するのとでは理解度が異なってくるものです。
 また、私は、受験時期、この流れの図として2種類の異なるチャートを作りました。それぞれ違う観点から作ってみたのです。そのおかげか、審判請求関係の問題にはまったく不安を感じなくなりました。自信をつける意味でも作業は重要なわけです。

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コメント

こんにちわ。
アドバイス大変有難うございます。
1 原則から例外ですがなんとなくイメージできてきました。
例えば共同出願なら29条1項柱書(原則)→38条(例外)なんですね。
言われれば理解できるのですが、この様な訓練って良い方法はあるのでしょうか?
もし宜しければお願いいたします。
2 論文試験の項目は、ある程度チェックリストを作成しています。
事例問題で、難しいのは、問いを見つけることだと思うのですが
先生ならこの辺りどのような訓練必要なんでしょうか?
質問ばかりで申し訳ありません。
先生のブログ結構役にたつので活用させてもらっています。
今後とも宜しくお願いいたします。

投稿: ぴょん吉 | 2006年12月 1日 (金) 10時33分

こんにちわ。
いつもアドバイスありがとうございます。
今回の記事大変勉強になりました。
こんな風に条文を勉強して理解するための勉強法はどのように
すれば良いのでしょうか?
是非アドバイス宜しくお願いたします。

投稿: ぴょん吉 | 2006年12月 1日 (金) 16時05分

コメントありがとうございます。

勉強に向かわれる姿勢が素晴らしいですね。ただ、あまり急ぎ過ぎても却って不毛な勉強に突き進む原因になると思います。

原則・例外の関係や事例に対する感覚を磨くには、具体的な問題について答案構成を行い、模範答案との比較をしていくというような地道な方法が実は最も早い合格への道であると思います。
ある程度「机にかじりつく」ということが大切なのです。

条文については、最近新刊がないのですが、青本を繰り返し読みますと、条文構成の全体像が自然に頭に入ってきます。
 いちど全体像が頭に入りますと、個々の条文がそこにある意味や、条文間の関係が見えてきます。さらに過去問を参考にしながら四法対照で規定を確認していけば、条文ベースの問題に対しても十分な力がついてくるものです。

ここでは、その過程の一部をご紹介しているつもりです。試験勉強は、愚直に見えますが、作業と繰り返しとが基本であると思っています。短期合格というのは、その方法を短期で行っているというだけのことだと思います。もちろん、他人が整理したものをうまく自分のものにできればそれは近道ですが、他人が整理したものを取り込む素地を作ることが、まずは必要なはずです。

このような回答でお答えになっているかは不安ですが、今後ともいまの姿勢を維持しつつ頑張って下さい。

投稿: ntakei | 2006年12月 2日 (土) 02時30分

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