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2006年11月 1日 (水)

地域団体商標の登録査定

地域団体商標の登録査定リストが特許庁から公表された。地域団体商標は、地域名を含む商標の登録を、その地域にある、所定の要件を満足する団体に対して認めるもので、つい先頃、法定された制度である。リストをみていくと、「稲城の梨」など、いまだにあるんだなぁ、と思うような商標も散見される。また「下呂温泉」なども登録されている。

▽ このリストを報じるマスコミの書き振りが面白くて、某有名新聞社の記事では、静岡の桜エビについて異なる商標権者に対してそれぞれ「駿河湾桜えび」と「由比桜えび」の双方登録されているのに、京都の「八つ橋」が登録されていないことについて(こちらも異なる出願人がそれぞれ出願している)、「桜エビ当選」だの、「八つ橋が漏れた」、などと変な書き方をしていた。

■登録商標の見方
 多くの場合、マスコミや、某巨大掲示板での登録商標や商標登録願の扱いとしては、マークの比較で終わっている。今回の記事でも見落としている点がある。商標は、マークもそうだが、指定された商品やサービスというのも、構成要素なのである。これらマークと、指定商品・指定サービスと、の2つの柱が商標を支えていて、これらを見ないことには類似しているともしていないともいえない。
 しかし、マーク間の比較問題だけが独り歩きしてしまうので、違和感のある記事ができあがると思われる。

■地域団体商標の指定商品・指定サービス
 地域団体商標の指定商品・指定サービスには、地域名称が入っている。たとえば、下呂温泉については、43類という分類のもので、「下呂市内における温泉浴場施設を有する宿泊施設の提供」という指定サービスになっている。
 記事では、温泉の素を販売するメーカーを気づかうような文章が見られたが、「下呂温泉の素」のようなものを販売しても、この商標権の侵害になる可能性は薄い。よほど悪意を持って、「下呂温泉」の商標権者が提供しているかの外観で行えば、侵害と認める可能性がないとは言えないが、「下呂温泉の素」は、「下呂市内における温泉浴場施設を有する宿泊施設の提供」ではなく、また、「下呂市内における温泉浴場施設を有する宿泊施設の提供」をしている者が販売していると誤認されるものでもなく、基本的に指定サービスが違うわけである。

□「桜エビ」と「八つ橋」とについてみる。
 「由比桜えび(商願2006-029538)」は、由比港漁業協同組合と由比町桜海老商工業協同組合との共同出願で、指定商品は29類の「由比で水揚げされた桜えび(生きているものを除く),由比で加工された桜えび,由比で釜揚げされた桜えび,由比で素干しされた桜えび,由比で煮干しされた桜えび」というものだ。地域に限定的であることがわかる。
 また「駿河湾桜えび(商願2006-034061)」は、蒲原町桜海老商業協同組合、由比町桜海老商工業協同組合、及び大井川町桜海老商業協同組合の共同出願で、指定商品は29類の「駿河湾産桜えび」なのである。
 一方、「京の八つ橋(商願2006-034105)」は、京都名産品協同組合というところの出願で、指定商品は、30類、「京都産の八ッ橋」であり、「京の生八ッ橋(商願2006-034171)」は、京名菓八ッ橋工業協同組合というところの出願で、指定商品は同じく30類で、「京都産の生八ッ橋」となっている。
 これらを見てお分かりの通り、桜えびに係る出願では、指定された商品が地域団体商標の趣旨に沿って大きく異なっている。マークについても地域差がでていて登録に適している。
 一方の八つ橋は、いずれも「京の…」となっており、また「京都産」という地域限定でしかないので、さすがに「生」か、そうでないかだけで、違う権利者に商標を与えることを躊躇したのではないか
 なお、こういう場合は、マークの登録要件に問題がなければ、それぞれの商標を受ける権利を各出願人間で分割譲渡して、両者の共同出願としてしまえば登録されると思う。あとは、権利者内での契約問題に代えられるので、その方がいいんじゃないか。

■今回の特許庁発のリストには、指定商品・サービスの掲載がないので、こういった細かい事情を見ることができず、件の記事のようなものが書かれたのだと思う。次回以降は指定商品・サービスも、併せて掲載することとしたらどうか>特許庁。

 それにしても、商標というのには、啓蒙的な「おはなし」本が、ないですね。誰か書かないものかな。

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