« 酒をあたためる話 | トップページ | 歩数計 »

2006年11月17日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(12)

前回は、準用条文は追って見る、という話でした。今回もその続きです。

▽ 今回は違う法律を準用している場合のことを扱います。

■わかるつもりが…
 まず、実用新案法30条を見てみます。

□実用新案法 第30条
 特許法第104条の2から第106条まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し、訴訟記録の閲覧等の請求の通知等、当事者尋問等の公開停止及び信用回復の措置)の規定は、実用新案権又は専用実施権の侵害に準用する。

 準用されている特許法のこのあたりの規定は、相次ぐ改正で最近だんだん増えているところです。実際、タイトルだけを並べてみますと、

□特許法
第103条 過失の推定 
第104条 生産方法の推定
第104条の2 具体的態様の明示義務
第104条の3 特許権者等の権利行使の制限
第105条 書類の提出等
第105条の2 損害計算のための鑑定
第105条の3 相当な損害額の認定
第105条の4 秘密保持命令
第105条の5 秘密保持命令の取消し
第105条の6 訴訟記録の閲覧等の請求の通知等
第105条の7 当事者尋問等の公開停止
第106条 信用回復の措置

となっております。勉強を始めて少々たちますと、例えば、実用新案では「方法の考案」は保護の対象でないのだから104条の準用がないのは当然、ということに気がつきます。

なぁんだ。簡単じゃんか。一々書き出すまでもねぇや。

と、たかをくくります。そうして「この準用規定はちょっと考えれば思い出せる、簡単」とマークしてしまいますと、うっかり実用新案において103条が準用されていないことが漏れてしまったりします。一次試験で、できているつもりが伸び悩んでいるというのは、案外そんな簡単なことだったりするのです。

 さらに、意匠法41条を見てみましょう。

□意匠法 第41条
 特許法第104条の2から第105条の6まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第106条(信用回復の措置)の規定は、意匠権又は専用実施権の侵害に準用する。

 そして商標法39条を見てみます。

□商標法 第39条
 特許法第103条(過失の推定)、第104条の2から第105条の6まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、書類の提出等、損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第106条(信用回復の措置)の規定は、商標権又は専用使用権の侵害に準用する。

 これらをみますと、なるほど特許法103条(過失推定)の規定は、商標法にのみ準用されているのだな、と分かります。そしてこればっかり記憶しておりますと、

・他人の意匠権を侵害した者については、その侵害の行為について過失があつたものと推定される。

という問題で引っ掛かってしまいます。この問題についての原則の解答はYesです※。

※「原則」と書きましたのは、例外があるからで、他人の意匠権を侵害した者については、その侵害の行為について過失があつたものと常に推定される。は、Noになります(秘密意匠があるから)。

なんとなれば、意匠法には、過失の推定規定があるからです。

□意匠法 第40条
 他人の意匠権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。ただし、第14条第1項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権又は専用実施権の侵害については、この限りでない。

 こういう規定を一覧するためには、「産業財産権四法対照法文集〈平成19年度版〉」を使うのが便利なのですが、準用条文を追うときは、必ず準用元の(この場合は特許法の)各規定が書いてあるところを見てください。そうでないと、意匠法40条のように、準用していないが、関連する規定がある場合を見逃してしまいます。

 上のリストをつかってまとめるとすれば、準用関係は、次のようになります。
 準用条文については、だいたい必ず、こんな程度には整理しておき、「産業財産権四法対照法文集〈平成19年度版〉」の空いている部分に書き込んでおきます。

第103条 過失の推定              (意40)・商
第104条 生産方法の推定            (準用なーい)
第104条の2 具体的態様の明示義務       実・意・商
第104条の3 特許権者等の権利行使の制限    実・意・商
第105条 書類の提出等             実・意・商
第105条の2 損害計算のための鑑定       実・意・商
第105条の3 相当な損害額の認定        実・意・商
第105条の4 秘密保持命令           実・意・商
第105条の5 秘密保持命令の取消し       実・意・商
第105条の6 訴訟記録の閲覧等の請求の通知等  実・意・商
第105条の7 当事者尋問等の公開停止      実
第106条 信用回復の措置            実・意・商

《演習問題》
 特許法193条2項は、公報掲載事項を定めた条文であり、実用新案法53条2項で準用され、また意匠法66条2項、商標法75条2項にそれぞれ対応する規定が設けられている。対応関係を表に整理せよ。

 追補として書きますが、意匠法40条の規定と、意匠法37条とを比べてみて下さい。

□意匠法 37条(3項)
 第14条第1項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は、その意匠に関し第20条第3項各号に掲げる事項を記載した書面であつて特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告した後でなければ、第1項の規定による請求をすることができない。

 いわゆる秘密意匠については、差止請求をするときには所定書面を提示して警告することを要するわけです。一方、意匠法40条の規定にあるように過失の推定まではされないものの、損害賠償の請求の際には、この書面提示・警告は不要です。故意・過失が立証できれば、いいわけです。具体的にどうするかが疑問ではありますが、損害賠償を求めるにあたり、規定上は、差止請求で求められる書面の提示や警告は不要だと憶えておいて下さい。

■民訴準用条文
 特許法151条を見てみます。

□特許法 第151条
 第147条並びに民事訴訟法第93条第1項(期日の指定)、第94条(期日の呼出し)、第179条から第181条まで、第183条から第186条まで、第188条、第190条、第191条、第195条から第198条まで、第199条第1項、第201条から第204条まで、第206条、第207条、第210条から第213条まで、第214条第1項から第3項まで、第215条から第222条まで、第223条第1項から第6項まで、第226条から第228条まで、第229条第1項から第3項まで、第231条、第232条第1項、第233条、第234条、第236条から第238条まで、第240条から第242条まで(証拠)及び第278条(尋問に代わる書面の提出)の規定は、前条の規定による証拠調べ又は証拠保全に準用する。この場合において、同法第179条中「裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実」とあるのは「顕著な事実」と、同法第204条及び第215条の3中「最高裁判所規則」とあるのは「経済産業省令」と読み替えるものとする。

 この条文は、「民訴準用条文」と呼ばれます。「民事訴訟法」など、普通は縁がないうえ、こんなにも多くの準用がありますので、つい、「やらなくても良いよな、民訴だもんな」と考えがちです。しかし、一次試験では時折でも出題されることがありますし、1点に泣くよりは、勇気をだして、この森に分け入っておく方がお勧めです。そして実は、見かけほど大変ではありません。

 民事訴訟法は、特許法の大部分と同様に「手続法」です。基本的に手続の流れが書いてあるだけなのです。ですから、訴訟の進行に沿って勉強すれば、それほど手ごわくありません。実際、「コンサイス判例六法〈2006〉」など、六法を片手に「よくわかる民事裁判―平凡吉訴訟日記」を一通り読めば、その構造が大分、分かってきます。

 さて、ここでは、民訴の条文をどこからか取得して(例えばウェブで条文を採れるサイトもいくつかあります)、「産業財産権四法対照法文集〈平成19年度版〉」に貼り付けておきます。念のため、準用されていない条文を消しておきます。また、各準用条文の要旨を書き出します。この書き出し作業がちょっと大変ですが、やってやれないことはありません。このとき、読み替えを反映させてしまいます。たとえば、こんな具合です。

・期日
 93(1) 申立・職権で審判長が期日指定
 94    呼出状・出頭者への告知 電話・FAX可能=この場合、期日不遵守の不利益は呼び出された者に帰すこと不可、ただし、期日の呼出を受けた旨の書面を提出したときはこの限りでない。

・証拠
 179 顕著な事実は証明不要
 180 証拠の申出は証明対象事実の特定要、期日前OK
 181 ……

長くなりますので、ここで止めておきますが、この内容は、私が受験時代に「産業財産権四法対照法文集〈平成19年度版〉」に書き込んだ内容そのものを引き写しました。

■準用条文は、このほかにも、商標法の防護標章制度のパートなど、数が多くあります。防護標章などは、ほとんど商標法を再構成して作られている状態ですので、商標法本文の準用される側の規定に、「防」マークをつけていけば、勉強がしやすくなると思います。そんなコツもありますが、

「準用条文は面倒でも必ず追う。」

これが原則の勉強法であることに変りはないと思います。

□ご紹介した本:
・定番の四法対照。一次の勉強に至便。

・数ある六法でも、これが携帯性や閲覧性の面で最も優れると思う。弁理士試験、付記試験勉強には必要にして十分。

・民訴の異色の入門書として。物語を使って手続順に解説があり、初心者にとって読みやすいし、最高に分かりやすい。ただし、民訴の勉強用としては、条文と対照することが大事。

|

« 酒をあたためる話 | トップページ | 歩数計 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [弁理士試験]特許法案内(12):

« 酒をあたためる話 | トップページ | 歩数計 »