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2006年10月 6日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(6)

特許法案内の名目を掲げているものの、最近は条文に分け入ってしまって身動きが取れないような状態の気もする。今日辺りで29条については切り上げたいところだが…。

▽前回から新規性の条文について触れている。この29条には、いわゆる3つの登録適格性の基準がぎっちりと盛り込まれている。

□第29条(第一項)

     産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
    1.特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
    2.特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
    3.特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

 繰り返しになりますが、この条文の構造はこうでした。
・第1項柱書 → 産業上利用可能性
・第1項各号 → 新規性
・第2項   → 進歩性(非自明性)

 前回は柱書について説明しましたが、今回は新規性のことに移りたいと思います。

■新規性
 新規性(Novelty)とは、発明が客観的に新しいことの要求です。主観的に新しいのではなく、客観的な新しさの要求。
 この新規性を求める趣旨は、要するに、「法は、新規発明公開の代償として特許権を付与する」だから、「既に公開されている等、新規でない発明には権利を与える必要はない」ということになります。もうちょっと言えば、国家産業の発展のため、発明の秘蔵を怖れて特許制度を入れているので、秘蔵されておらず、既に公開された発明ならば権利を与える必要性を欠く、ということです。仮に論文で書くのなら、前者の程度にコンパクトにまとめておくのが好ましいでしょう。

■特許要件の分説
 ちかごろの論文では珍しいので、このあたりの話を省いてもいいのでしょうが、念のため。要件の分説では、判断の対象、判断の主体、判断時期、内容などを記載していきます。

 では、新規性判断の対象とは何か。

 何を言う。「明細書でしょうが。」 はい。この答えの人。50点、ですかね。
 「特許請求の範囲に記載の事項」ですよね。こういうところを間違えてはいけません。クレイムが判断の対象です。従って、クレイムされた発明が上記各号に該当しないことが要件です。

 駆け足で、要件自体を見てみましょう。
 「特許出願前」というのは、出願の時、をいいます。39条などが日の単位で判断しているのに対して、こちらは時間。時、分までを問題にします。そこで、「教授が午前中講義、午後出願は新規性なし」という例がレジュメに載っていたりするのです。

 「日本国内又は外国において」なぜ、こんなことを。と思った人いませんか。だって、日本国内又は外国、といったら、空間的な制限がありませんから。
 宇宙はどうか、とか、そういうものではないんです。簡単な理由なのですが、実はその昔、公用の要件(2号)などは国内公用限定だったりしたんです(内国主義)。それがすべて外国を含むように変えられた(世界主義)ということです。時流の流れ、ということです。

 ここまでは1から3号のどれも共通です。ここからがちょっと違う。

■「公然」
 吉藤を書きだしてみます。

 公然とは秘密を脱した状態をいう。…中略…知る人の多少は問題ではない。
 これを知る人がたとえ多数であっても、発明者のためにこれを秘密にすべき関係にある人−中略−のみであれば、その発明は秘密の圏内にあるから、「公然知られた発明」ではない。
 反対に、発明者のために秘密にすべき関係の無い人−中略−がこれを知るならば、たとえ一人であっても、その発明は秘密を脱しているから、「公然知られた発明」となる。

 吉藤は、発明者のためにこれを秘密にすべき関係にある人を「特定人」、発明者のために秘密にすべき関係の無い人を「不特定人」と呼びます。特定人とは黙示、明示を問わず、要するに守秘義務を負う人、ということです。いくつかの例示を挙げるのが論文では一般的でした。例えば工場での説明員。説明を求められれば説明する用意があった場合は「不特定人」とか、そういう感じです。

■「知られ」(1号)
 ここにも解釈があります。いわく、「公然知られたことを要するか」です。知られ得る状態にあっただけで、「知られ」なのか、現実に知られて初めて「知られ」か、ということです。
 一般的には、現実に知られたことを要する、と言われます。しかし、この理由付けがちょっとふるってます。

 公然知られ得る状態と解すると、1号は3号と重複した規定となるから

だから、そうは解さないのだ、というのです。「重複上等」じゃないのでしょうか。この理由付けはおかしい、という人も多いところです。現実には「知られ」の解釈を区別する実益などないのでしょうが、一応通用している解釈ですし、理由付けもなんとなく通っちゃっているので、

「現実に知られたことを要する。なぜならば、公然知られ得る状態と解すると、1号は3号と重複した規定となるからである」と書いちゃう

のがいいです。

 面倒は徹底して避ける。

 それが弁理士試験流です。

■「実施」(2号)

 こちらは、2条3項規定の通りです。
 ただ、発明がエンジン内部など、外部に曝されていない場合では、公衆面前で走行したからといって直ちに「公然と実施した」とは言えない場合があるでしょう。
 同様に譲渡や貸渡についても、内部を見るなという特約があるなどの事情ならば、「公然実施」にならない可能性がないともいえません。

■文献公知(3号)
 上二つの規定とうってかわって、「頒布された刊行物に記載」または「電気通信回線を通じて公衆に利用可能」な発明は登録の適格性がないよ、という規定です。
 後者はインターネットなどでの公開が文献公知に当たることを明確にしているわけですが、前者は歴史が古く、いろいろな解釈論があります。
 まず、「刊行物」とは何か、とかいうことがあります。これは「公衆に対し頒布により公開を目的として、複製された文書・書面・写真等の情報伝達媒体をいう」というのです。「公衆」、「頒布」、「公開を目的」、「複製」…難しいですね。難しい場合、それぞれの単語が何かを除外しようとして意図的に含められていることが多いのです。

 例えば、秘密出版物でないことをいうために「公衆」などとなります。この要件を「公開性」ということがあります。

 内容の公開が目的というのは、情報として流通させることを目的としない、訴訟記録などを除外する意味があります。この要件は、内容自体が広く第三者に情報として流通されるべき性質(情報性)を求めたものと説明されます。

 また、これらの結果、必然的に、公衆に頒布される性質が現れる(頒布性)といわれます。

 しかし、これらの点に加えて問題なのは、こうした文献に、「発明が記載されている」ことが大切なのです。クレイムされた発明が書いてあること。こうしたことが重要です。

■文言解釈以上に大事なこと
 こうした文言解釈をある程度知っておくことが大事ではあるのですが、それに合わせて、特許庁が発行している「審査基準」というのも併せて目を通しておくことが必要です。
 審査基準では、クレイムされた発明の特定、構成要素の比較といった具体的な判断方法が述べられており、仮に出題されれば、論文で使える場合も多いためです。

 審査基準は、ここにあります。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun.htm

 例えば、上の「発明が記載されている」とは、どんなことか、について、II部、第2章「新規性・進歩性」の基準の9ページに、

「刊行物に記載された発明」は、「刊行物に記載されている事項」から認定する。記載事項の解釈にあたっては、技術常識を参酌することができ、本願出願時における技術常識を参酌することにより当業者が当該刊行物に記載されている事項から導き出せる事項(「刊行物に記載されているに等しい事項」という。)も、刊行物に記載された発明の認定の基礎とすることができる。すなわち、「刊行物に記載された発明」とは、刊行物に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握できる発明をいう。

 とありますよね。「実質的に記載されている事項」ということです。ちょっとズルイ、特許庁。

■うーん、進歩性が残っちゃった。どうしよう。来週…??

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