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2006年9月19日 (火)

それはカオティック

また台風が甚大な被害をひきおこして行った。テレビで見るだけでもそのツメ痕のもの凄さには圧倒される。人間の非力さを思い知らされるわけである。被災地域の方々には、お見舞い申し上げたい。また、この台風はあと24時間もすると、熱帯低気圧に変わりそうであるが、今後の進路というのも、まだ要注意ではある。

▽気象予報は、昔は経験と勘とで行われていたのかも知れないが、現在は計算機科学の分野といっても過言でないのではないか。とにかくスーパーコンピュータが活躍する世界である。

■何を計算しているの?
 スーパーコンピュータ、というのには明確な定義がないようであるが、気象庁のそれはスケーラー(スカラーとも)技術を用いたもので、要は演算命令を並列実行できるようになっているようである。
 計算の内容は、公開されているのかどうかわからない。以前は、大気を立体的なメッシュに分割し、各メッシュの交点の気圧、風速、風向などを表わすモデル(非線形な偏微分方程式になる)を作成し、このモデルに従って時間積分していく演算をしていたようだが
 ※「数値予報新講」,岸保勘三郎,1970年

 基本的に、大気に摩擦がなければ、ある地点(注目地点)での大気の運動方程式は、東向き(x座標正の向きとする)の風速をu、北向き(y座標正の向きとする)の風速をv、気圧をpとして、

du/dtー2ω sin φ・v=ー(1/ρ)・(∂x)p
dv/dt+2ω sin φ・u=ー(1/ρ)・(∂y)p

と書くことができる。ただし、ωは地球の自転角速度、φは注目地点の緯度を表わす。気圧傾度力とコリオリの力だけからなる単純な方程式である。
 もっとも、加速度項(du/dt,dv/dtの項)は、実質的にはコリオリ力に比べて十分小さいとして、落としてしまえる(いわゆる地衡風近似)。

 ただし、大気には実際には摩擦があるのだし、地上付近の風の動きというのは、地表面の状況によっても区々だから、上の関係式を単にメッシュで解いただけでは、だめなのである。

■それはカオティック
 従って実際の大気の方程式はもっと複雑な形をとっているのであるが、その解はカオス的(カオティック)な振るまいを示すのである。カオス的ふるまい、というのは、方程式が確立されていても、初期条件がちょっと異なると解が大きく異なってしまうことである。観測の誤差が「0」にはならない以上、このことは数値予報にとってかなり致命的である。

 気象庁のウェブページによると、このカオス的な振る舞いの方程式に対して、初期値をある程度ばらつかせて放り込み、その解の統計的性質で予報を決めることになっているようだ(アンサンブル予報)。例えば総計N個の初期値群で台風の進路を予測する場合、ある地点に着目すると、一部n個の初期値からの演算では通らないが、他のN−n個初期値では通る、という場合、その地点を台風が通過する確率が(N−n)/Nとして直接的に求められる。なお、演算に使う初期値の数は、今年の3月に倍程度に増やされた模様である。今後も、メッシュの解像度増などが考えられているようだが、あまりブレイクスルーになる研究はないのかしらん。

■カオス的振るまいを行う現象の数値演算については、私にも大学院の時代は多少のアイディアがあったのだが、いまはどんなものだったのか忘れてしまった。まぁ、たかが院生の考える程度なので、大したモノでないのは明らかだが、遠い時代になっちゃったなぁと感慨しきり。

 台風進路の予想。今後とも重大な課題であるし、気象庁の方々の今後の研究にも期待したいと思う。

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