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2006年9月29日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(5)

そろそろ10月の声を聞くようになり、三次試験受験生が練習会に奔走し、来年組がまた基本書読みを始めようかという時季になった。と、このときになって、JTBあたりから「クリスマスの宿」とかいうメールが来てビックリした。なんでも年末のクリスマスシーズン、今年は曜日の関係で、いつもより宿の混雑が予想されるとかなんとか…。で、見てみると確かにイブが日曜日、当日は月曜日で、月曜あたりで有給でも取れれば、という人もいるのかなぁと。

と、いうわけで、とりあえず、楽天トラベルのリンクなどを貼っておきつつ、話は受験の方へ戻り…

楽天トラベル

▽前回は29の2の話題でした。連続しての話題でしたので、そろそろ飽きてきたのではないかと思います。前回末尾では補正要件についてお話しようと言っていたのですが、しかしながら特許要件の規定を中途半端にしておいてもいいことがありませんので、文言解釈の練習を兼ねて、29条の方へ視点を移したいと思います。特に今回は第一項。

□第29条(第一項)

 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
1.特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
2.特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
3.特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

 第一段落目、「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」の部分を柱書きと呼びます。その後の1,2,3は、1号、2号、3号と呼びます。

 と、ここでちょっと脱線して論文での根拠条文の記載方法ですが、
正統的には… 特許法第29条第1項第1号、のように書きます。しかし多少略記して(特許の試験ならば「特許法」も省略して)、29条1項1号、のように「第」を省略しても文句はいわれません。しかしながら、「36条の2」のように、「…の2」のつく条文になると、多少注意が必要です。ここで36条の2、2項と書くと読みづらいのです。こういうときは、「36条の2第2項」と、数字が続いて見にくくなるところにだけ「第」を入れます。なお、特許法の条文で意匠法の条文を引く場合などは、法文の名称も省略してはいけません。当然ですね。
 脱線終了。

□分説
 さて、この条文は、柱書きで、特許要件の一つである「産業上の利用可能性」を求め、さらに1から3号の各号で「新規性(Novelty)」を求める、という構造になっています。

 そして、産業上の利用可能性については、そのまま「産業上利用することができる発明」であることを求めています。弁理士の試験において、産業上利用可能であるとの意味を論文に記載する場合、自分の意見を開陳してもそれは得点にはつながりません。過去に積み重ねられている議論の内容に沿って記載することが求められているのです。言ってしまえば「ツマラナイ」話ですが、所詮は試験。そういうことです。

 で、産業上の利用可能性について、過去にどんな議論が積み重ねられているでしょうか。
 まず、産業ってなんだ、という議論があります。これについては特許庁の実務に沿って説明することが適切とされます。つまり、

「生産業のみならず、工業、鉱業、農業、林業、漁業、水産業などのほか、運輸業・交通業のように生産を伴わない補助産業的なものを含む。ただし、保険業・金融業・医療業のようないわゆるサービス業は含まない。ただし、サービス業であっても、洗濯業、広告業のようにその業務において自然法則を利用するものが考えられる場合は、ここでの産業に含むと解される」

というようなことになります(これはかなり長いバージョン)。結論から言えば、「自然法則を利用する技術が使われる業種はどれも産業ということにしようよ」という意味です。ただ、「産業」=「生産業」のニュアンスがあることから、

  • 生産を伴うもの
  • 生産を伴わない補助産業的なもの
  • サービス業 −自然法則を利用した方法等が考えられるもの
  •       −考えられないもの

と分類したということです。なお、昨今の実情では、保険・金融業でもコンピュータ技術などを介して産業上の利用可能性が認められることがあります。しかし医療業については、相変わらず問題があるのです。この、「医療業は産業であるか否か」については、論点(ややマイナーだが)ではありますが、いまここで扱うことは混乱を招きそうだからやめておきましょう。

 次の問題は「利用」ってなんだ、ということです。これについては「利用」は「実施(法2条3項)」のことだ、と解されています。

 そのほか産業上利用可能性の問題については特許庁の審査基準を再録して説明していくと簡単。というのも、審査基準には「産業上利用することができる発明」に該当しないものの類型というのがあるからです。これには、
(1)人間を手術、治療又は診断する方法
(2)その発明が業として利用できない発明(喫煙方法など)
(3)実際上、明らかに実施できない発明(オゾン層減少による地表での紫外線量の増加防止のため、地球全体を紫外線吸収フィルムで覆うなどといった発明)
といったものが書かれています。この審査基準は、http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/tjkijun_ii-1.pdfで手に入ります。

□結局、分説をするときには「産業」、「利用」という分説をしていくことになります。分説の仕方を適当にして、『「発明」とは、…』などとしてしまうと、題意を外していくことになるわけで、分説方法も問題文が何条の問題を指しているかによって変わってくるのです。

 ここでまた脱線して、1次の問題を一つ。
・「動物を診断する方法が、産業上利用可能な発明に該当する場合はない」Yesか、Noか。

 答えは No ですね。「場合はない」という書き方は、例外を考慮してごらん、ということを仄めかしています。ここでは審査基準の記載との相違を見つけ出して下さい。そう、「動物」を診断する方法、とあり、「人間」を診断する方法、とは書いてありませんね。「動物」には人間以外のものが含まれます。審査基準では明らかに人間のみ対象にしていますから、「場合はない」とは言えない、ということで No と、いうことです。

□吉藤に書かれた「問題点」
 このほか、吉藤を参照すると、

(1)利用は可能性で足りるか
(2)経済性が必要か
(3)技術的不利益と伴うものは産業上利用可能といえるか
(4)技術的価値を有しないものは産業上利用可能といえるか

といった問題点が挙げられています。ここでは単純に理由と結論だけを書くと、次のようになります。

(1)利用は可能性で足りるか=OK.将来的に実施可能であればOK.基本的発明であるほど実施化に相当期間を有するのが普通だし、特許制度の趣旨からしてそのような発明を保護する必要がある。

(2)経済性=不要。発明の質、技術的価値とは無関係なものであるから。

(3)技術的不利益と伴うものは産業上利用可能といえるか=いってよい。改良や他の技術を用いて不利益を除去できる場合が多いから。ただし、不利益が到底除去できる可能性がなく、発明のもたらす利益を遥に超えてその発明の利用可能性を実質否定するものはNG。

(4)技術的価値を有しないものは産業上利用可能といえるか=いえない。商品として採用される可能性がないようなものは、産業上利用できるとはいえない。

 これらの記載から見ると、吉藤はどうやら、実施可能性というのを商業ベースに乗せるのに十分かどうかという観点を持っているようですね。これに対して現行の特許庁の審査基準ではそうでもないようなので、論文試験では、これらの問題点については、多少の調整をして書くか、あるいは書かないようにしたほうが無難かも。もっとも最近の試験では柱書きについて、そこまで突っ込んで書かせるようなことはないと思います。

▽ ありゃりゃ、長くなっちゃった。新規性については、来週か、または原稿が書けたら、この週末あたりにアップロードしようかと思います。

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