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2006年9月 8日 (金)

[弁理士試験]特許法案内(2)

そろそろ来年の受験で使える書籍が出始めました。
例えば四法対照などです。

一方、青本はなかなか新版が出ませんが、こちらは(少なくとも私と同じやり方で一次合格を果たすには)必須の書籍ですし、内容を補う改正本が次々出版されてますので、そちらで手当て、ということでしょうか。

ちなみに弊所には、「この試験の合格に基本書なんて要らない」と豪語している人がいますが、その人でも青本は必要と言ってました。そういうのを「基本書」というのではないかと思うのですが…。

・青本=「工業所有権法逐条解説」

特に商標法は、この本なしには考えられません。

・H15改正法

・H16改正法

・H17改正法

▽さて、前回は1条、68条あたりをご案内しました。法目的と、登録による保護の側面です。今回は、利用促進の側面は置いておいて、保護された権利の実効的な側面についてご案内します。主要な条文は39条ということになります。

(語り口調で行く方が楽なので、今回はですます調で参ります)

■ 39条

1 同一の発明について異なつた日に2以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。

2 同一の発明について同日に2以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。

3 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合において、その特許出願及び実用新案登録出願が異なつた日にされたものであるときは、特許出願人は、実用新案登録出願人より先に出願をした場合にのみその発明について特許を受けることができる。

4 特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合(第46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願(第44条第2項(第46条第5項において準用する場合を含む。)の規定により当該特許出願の時にしたものとみなされるものを含む。)に係る発明とその実用新案登録に係る考案とが同一である場合を除く。)において、その特許出願及び実用新案登録出願が同日にされたものであるときは、出願人の協議により定めた一の出願人のみが特許又は実用新案登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、特許出願人は、その発明について特許を受けることができない。

5 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第1項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第2項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。

…第6項から8項を省略…

長い条文です。「先願主義」を定めた条文として重要であるとされています。
項別になっていますが、各項がそれぞれ違う要件を規定しています。こういう、要件を定めた条文では、各項目で述べられている対象物と、その具体的条件とを関連づけて整理していくことがたいせつです。

そういう目で、まずは対象をみていきますと、1項は、「同一発明異日に」出願されたケースです。2項は、「同一発明同日に」出願されたケース。3項は、「同じ内容の特許出願と実用新案登録出願と異日のケースで、4項は、括弧書きを無視すれば同じ内容の特許出願と実用新案登録出願と同日のケースを規定しています。5項は、これら1から4項に該当しない場合を述べています。ですから、この39条は、特許 vs 特許のケースと、特許 vs 実案のケースとで、それぞれ異日、同日のケースが入れ子に規定されていることがわかります。効果は簡単で、異日の場合は、先に出願した者勝ち。同日の場合は協議で定めた一の出願人(これはミソの言い方で、共同出願にしてしまって、二名からなる一の出願人としてもいいわけです)が特許等を受けることができることになってます。

 こうしてみると、39条の長い条文が、実はそれほど習得しにくい規定でないことが分かってくるでしょう。

 しかし、これで39条の対象とするところが完全に整理されたかというと、そうでもありません。

■先願主義の本意
 この先願主義の規定(39条)について、「早いもの勝ち」の規定だ、という程度にしか理解していないのではこまります。まあ、それはそれで正しいんですが、この規定の趣旨は「重複権利の排除」にあります。
 特許法では、特許権を排他的なものであると構成します(68条)※。

※特許権を専用権と捉える立場(専用権説)でも排他性を否定してはおらず、物権であるかぎり当然だと言っているに過ぎません。

 要するに、同じ権利が2つあるというだけでおかしいのです。このときの解決策としては、

  1.  いずれか一方を無効にする
  2.  両方有効にする
  3.  双方で蹴り合う

などがあります。特許法は排他的に1をとります。商標法は、類似部分(いわゆる禁止権範囲)に限り、3をとります。
 また排他的にする1.のケースをとる場合、どれを選択するかの基準として、

  1.  先に創作した者勝ち(先発明者主義)、
  2.  先に出願した者勝ち(先願主義)、

のふたつが、伝統的にあるわけです。
 では、わが国はどうするか。先願主義を採用するわけです。
 つまり、先願主義の目的とするところ(趣旨)は、「重複した権利(ダブルパテント)の排除」にあるということになります。

39条で排除されるのは、重複した「権利なのです。権利はどこで画定されているのでしょう。

□70条(1項)

特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

そうです。「特許請求の範囲」の記載事項(いわゆるクレイムが権利範囲です。
つまり、同じクレイムがあることが39条の問題です。極論をすれば、同じ明細書でも、クレイムが違っていたら39条によって拒絶されることはありません(ただし表現の差程度の実質的同一の場合は39条によって拒絶されることがあります)。しかも、権利にならなければ39条の問題にならないんですから、拒絶されちゃった場合や、審査請求せずに取下げたとみなされちゃった場合は、39条によって他の出願を拒絶できないんです(39条5項はこれを言っています)。

 以上で、39条は、同じクレイムの出願が先に権利になっていたら、後から出願した人は権利が貰えない、ということだと判りました。ところが既に言いましたように、39条の先願主義には重要な対抗馬がいるんです。おなじ重複権利の排除の方法として、先願主義に対してもう一つの方法、それが「先発明者主義」です。先に発明した人が権利を取得し、後から発明した人は権利は貰えない、という方式です。アメリカがこの方式なのです。なぜ、わが国は先発明者主義を採用しないのでしょう。これが、39条の立法趣旨(論文のキーワード)につながっていきます。

■つまり、まとめると…
 特許権は独占排他的権利です。従って、重複した権利は排除せねばならない(ダブルパテント排除の原則)のです。この方法として先願主義と先発明者主義とがあるのです。先発明者主義は、一見すると真の発明者を保護するという点で優れています。しかし、発明の時点の判断が困難であるなど、紛争が多発しやすく、権利が不安定になりがちです。先願主義にはこうした弊害がないですね。また、先願主義は、発明をいち早く公共の利益のために公開しようとする者を保護するもので、特許制度の目的により適しているといえます。
 先願主義を立法した趣旨には、こんなものがある、ということです。

■語句解釈
 39条をもう一度見てみましょう。3項です。
 「特許出願に係る発明と実用新案登録出願に係る考案とが同一である場合」、これは何を意味しているのか、もうお分かりでしょうが、「特許出願に係る発明」が「特許請求の範囲に書かれた発明」のことです。ということは「実用新案登録出願に係る考案」は、「実用新案登録の範囲」に書かれた考案のことなのです。特許法や実用新案法には、「特許出願に係る発明」や、「実用新案登録出願に係る考案」という表現がいくつか出てきます。
 例えば49条(拒絶査定)の条文をごらん下さい。

□49条(1項柱書き+2号)

審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
…中略…
ii その特許出願に係る発明が第25条、第29条、第29条の2、第32条、第38条又は第39条第1項から第4項までの規定により特許をすることができないものであるとき。

これで、新規性(29条)などの審査の対象がクレイムであることが明確になっていると思います。

次回…どうしましょうかね。折角ですから、このまま特許要件のご案内に突入してしまおうかしら。

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