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2006年7月 4日 (火)

最後ではない最後のはなし

まず、無粋な連絡事項から。
ココログですが、7月11日から13日までの2日間、まるまる更新等の作業ができなくなります。閲覧は通常通りとのことです。どうにも、この種のメンテナンスについてのココログサービス側の対応はあまりよくありません。告知に使える画像等を提供したらいかがでしょうかね。

▽さて、そのココログ、google 等の検索サイトから、このブログを訪れて頂くと、検索サイトで入力された検索キーワードが記録に残ります。要するに、どんなキーワードで検索されてきたかを知ることができるわけです。そんな中で、やや頻繁に現れるキーワードで気になるものが。それは「最後の拒絶理由」というものです。特許出願の手続で現れる用語の一つですが、分かりにくいのかなぁ。

■ 名前が悪い「最後の拒絶理由」
 名前が悪い、というのは私にも判ります。こんな説明があるからです。

 ・最初に通知する拒絶理由は常に、「最初の拒絶理由通知」です。
 ・最初の拒絶理由通知のときに出願人がした補正により、通知することが必要となった拒絶理由が「最後の拒絶理由通知」です。
 ・拒絶理由通知は、最初と、最後と、の二回だけです。

 ところが、続けて、

 ・二回目の拒絶理由通知が最初の拒絶理由通知となる場合があります。
 ・その場合、当該二度目の最初の拒絶理由通知に対して出願人がした補正により、通知することが必要となった拒絶理由は「最後の拒絶理由通知」です。

 こういう説明を見ていると、思います。

…全部で三回でてるじゃねーか、何が「二回」じゃ。

 最後の拒絶理由通知、「最後」の意味合いがはっきりしません。

■ 「拒絶理由」は撤回されたりする
 拒絶理由通知、というのは、特許出願に対して特許庁がダメだしをするときにする通知です。審査の過程での最終的なダメだしは、「拒絶査定」と呼ばれます。

※もっともこれに対しても不服を申し立てることはできます(拒絶査定不服審判)。
 

いきなり拒絶査定をしたのでは、出願人が出願書類を補充・訂正することすら難しいし、審査官だって誤りがないとはいえないから、出願人から意見を聞こう、もし、誤っていたら撤回しよう、というわけで、出願人に対して意見を申し立てる機会を与えるのが、「拒絶理由」ということです。

 こんな趣旨ですから、審査官が最初に、「新しくないじゃん(新規性:29条1項)」という拒絶理由を出すとすると、これは1度目ですから当然に「最初の拒絶理由」ということになります。これに対して出願人が補正もせず、単に意見を述べた結果、この意見を見た審査官が、

「しまった、間違えたか。しかし、こっちの文献を見れば簡単に作れるわな」

ということになると、「同類の業種の人なら簡単に作れた(進歩性:29条2項)」という拒絶理由を出すことになります。このとき、どうでしょう。審査官は前回の拒絶理由を撤回してしまいました。すると、これは最初にする拒絶理由と条件的に変わらないことになります。そこで、これもまた「最初の拒絶理由通知」ということになります。

 このように補正のないケースでは、仮に審査官が意見を見ても、

「何をいう。やっぱりダメじゃ」

ということになると、拒絶査定、ということになります。

■ では、最後の拒絶理由通知とは
 つまり最後の拒絶理由、となるためには、

 ・既にした拒絶理由を前提としていること(撤回していないこと)、

が必要です。その上で、補正によって追加された部分(またはそれと同等と見なせる部分)について、拒絶理由を通知しなければならない、というとき、査定ではなく、「最後」になるわけです。撤回していない理由に付け加えて、出願人が意見を述べる機会が未だ付与されていない理由を通知するからです。
 そしてこれを「最後」という理由は、この最後の拒絶理由を撤回せず、最後の拒絶理由のときにした補正に文句があるときには、もう一度拒絶理由を出したりはしないぞ、ということなのです。意見を述べる機会をそれだけ制限した、ということです。

■ 審査基準を見る
 以上のことを踏まえて、「審査基準」の「第IX部、審査の進め方」の9ページ、「4.3.3.1 最後の拒絶理由通知とすべき場合」を見てみましょう。ここには類型がでていて、比較的分かりやすい説明となっています。類型は基本的に4つに分かれています。それぞれ、

  •  (1)当初のクレイムの構成要件を補充・訂正したとき、
  •  (2)クレイムを追加する補正をしたとき、
  •  (3)実質的にクレイム追加と同じような補正だったと言えるとき、
  •  (4)特別な場合

ということになります。(1)の例を見ると、補正前のクレイム「A」に対し、技術事項αを加えてクレイム「A+α」に補正されたとして、この「A+α」について新しく新規性・進歩性の拒絶理由を通知する必要がでた場合などが「最後の拒絶理由」の典型例だとしています。
 ここまでくると、他の例についても、分かりやすいのではないかと思います。ただ(4)の特別なケース、というのは、

「うわぁ、ここだけ記載を直してくれたら特許にしてもいいのにな」

と審査官が考えたとき、その旨を通知する拒絶理由ということです。審査官は公式の文書としては拒絶理由通知という制限された形でのみ、出願人と連絡をとるわけで、そういう意味では最後の一押し的なお知らせを拒絶理由通知という書面でお届けした、という、いささかお役所的な、というか、なんというか…。いずれにしても、この特別なケースは「優しい拒絶理由」ということです。

■ 中間処理の定番テキスト
 …だったのに、しばらく改訂されていないですね。大層優れた本であると思います。改訂を望みますね。

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コメント

『拒絶理由通知との対話』は、残念ながら絶版で入手できません。
都立図書館に蔵書がありますので、区立図書館経由で貸出を受けるのが現実的な閲覧方法のようです。

以前、”特許男”blogでも話題になったので、、、
==大ネコ

投稿: 大ネコ | 2006年7月 4日 (火) 04時06分

都立図書館ですか。有栖川記念公園の中にあるアレですね。あそこは開架式ベースで本が取り出しやすく、私も高校時代に愛用していました(たしか16才未満立ち入り禁止だったかと)。

著者の稲葉先生も、最近は別の書籍でお忙しいとの噂で、この本の改訂ももうされないかもしれませんね。どこかでオンデマンド販売してくれても、まだ需要はあるかと思うのですが。

投稿: ntakei | 2006年7月 4日 (火) 15時13分

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