« ワカンナイ | トップページ | 味の再現 »

2006年4月10日 (月)

[弁理士試験]論文の理由づけ

日程や試験会場、試験委員の氏名等が公告され、「いよいよ」感のある今年の弁理士試験であるが、受験生の皆さんの準備は万端だろうか。

論文試験について、つらつらと書いてきたが、こういう概括的な話としては、ほぼ最後のしめくくりになるようなことを書く。「理由づけ」のことである。

▽「理由づけ」というと、まさかとは思うが、
 「…特許庁長官宛としたのは、手続の確実のためである」とか、
 「…出願人に酷となるからである」みたいに、定型的になっているものばかりをレジュメから拾って覚えるなどということをしていないだろうか。

・定型的な理由づけ、プラスα
 基本書で現れるような事柄について、まさに基本書に書かれているような理由づけをするときには、定型的な理由を書けば済むだろう(その場合も、レジュメで覚えるより基本書で覚えるほうがオススメである)。だが、事例問題において、定立した規範に当てはめつつ、結論を導こうかという論述過程では、必ずしも定型的な理由づけができるとは限らない。プラスαの理由づけが必要になる。

・登場人物
 弁理士試験で登場する人物は、何人もいない。主要な者は、(1)特許庁、(2)出願人(や発明者)、(3)第三者、くらいである。
 理由づけを行う際には、これら(1)から(3)の各人についての損得のバランスを取りにいくのが一般的なやりかたである。
 例えば、特許明細書の補正の機会を与える一方で、その補正の内容を制限することについては、「先願主義の下、出願当初から完全な明細書の記載を出願人に期待することは酷である」一方、「補正の遡及効により、出願当初の内容以上を含ませることは、先願主義に反し、(第三者との関係で)妥当でない」ということになる。

・二方向から攻める
 「Aであるから、Bである」または、「Bである。Aであるからである」の、Aのように積極的な理由(必要性)というものがある一方で、
 「Bだったとしても、C」や「Bと解しても、C」の、Cのように消極的な理由(許容性)というものがある。
 例えば、「出願人本人が出願前に発明イを発表し、発明イは公知となっていた。よって、発明イに係る本願発明は拒絶される」というときには、「発明イが公知になっていた」から「拒絶される」という必要性に基づく理由づけになっている。これに対して、「このように発明イに係る本願発明を拒絶したとしても、出願人本人がそのことを承知していたのだから、出願人に酷ということはない」というようなのが、許容性に基づく理由づけである。
 この例題では、ここまで理由づけをちゃんとしなければいけないものでもないが、主要な論点と目されるところでは、必要性・許容性の二方向から理由づけをしていく。これにより論証の緻密さが高まるのである。

・判決に学ぶ「理由づけ」
 判決文では、こうした、(a)バランスに配慮し、(b)二方向から攻めるという理由づけが散見される。例えば、平成11年(ワ)第12699号事件。この事件は、「真の発明者」が、発明者名の記載を求めて争ったものである。
 判決文を見ていくと、
「特許出願の願書には発明者の氏名及び住所又は居所を記載しなければならないが、その記載が誤っていた場合には、出願人は、出願手続が特許庁に係属している間は、補正により是正することができる(特許法17条)。したがって、本件発明の特許出願手続のように、いまだ登録にならず、出願手続が特許庁に係属中のものについては、願書に発明者として真実の発明者の氏名が記載されなかったことにより、発明者名誉権を侵害された場合に、その侵害行為の差止めを実現するためには、出願人に対し、願書の発明者の記載を真実の発明者に訂正する補正手続を行うように求めることが、適切であるといえる。また、そのように解したとしても、出願人に対して、不当にその権利を害するということもない。
 とある。「正しい記載に補正するべきだ、」という必要性に基づく理由づけと、「補正のできる間に補正手続を求めたとしても、出願人の権利を不当に害することにはならない、」という許容性に基づく理由づけがされていることがわかる。

・このように判決文においては、巧みな理由づけの方法がよく見られる。基本書でもときに巧みな理由づけが展開されていることもある。それぞれの勉強の折りには、こうした理由づけの方法にも着目すると、理由づけの論述の勉強に役に立つものである。

|

« ワカンナイ | トップページ | 味の再現 »

コメント

当初、「積極」「消極」という表現で理由づけの方向性を示しておりましたが、用語としては「必要性」「許容性」というほうがよい、との指摘をI先生から賜りました。個人的な理解で用いる用語よりも、一般に利用されている用語の方が受け入れやすいと思われますので、記事を修正しました。

また、「レジュメだけで十分です」というオフライン・コメントも、別の先生から頂きました。たしかに近年の試験ではかなり十分なものがあるかもしれませんが、個人的に、丸暗記方式はお勧めしません。

投稿: ntakei | 2006年4月11日 (火) 21時44分

下半分はたぶん私のことですよね・・・。
丸暗記は私も勧めてませんよ。単に、論文試験で必要となるレベルの法律構成は、レジュメに要領よくまとめられているので、わざわざ基本書を端から端まで読むのは(少なくとも合格するためには)必要ないと思っただけです(生きた実例がいるので)。丸暗記したものを吐き出すだけでは論文合格は無理でしょうが、それは別に自分で+αの法律構成を創作するというのではなく、基本書、判例等の法律構成をいかに設問の事例に合わせて適切に使えるか、ということだと思ってます。

投稿: Kaz | 2006年4月13日 (木) 14時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/165428/9528479

この記事へのトラックバック一覧です: [弁理士試験]論文の理由づけ:

« ワカンナイ | トップページ | 味の再現 »